fc2ブログ

積読本は積読け!!

300冊の積読本もなんのその、本や映画の感想などをつらつらと述べてみたり。

Entries

はやみねかおる『名探偵と封じられた秘宝 -名探偵夢水清志郎の事件簿 3-』

名探偵夢水清志郎の事件簿3 名探偵と封じられた秘宝 (講談社青い鳥文庫)名探偵夢水清志郎の事件簿3 名探偵と封じられた秘宝 (講談社青い鳥文庫)
はやみね かおる 佐藤 友生

講談社 2014-11-14
売り上げランキング : 78510

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

★★★★★
「心配しなくても、教授は元気だよ。近くの小学生が、わたしたちのかわりに餌を持ってきてるみたい。」
美衣が、すこしさびしそうにいった。

虹北商店街の地域復興イベント「赤い夢カーニバル」で大事件が発生! 鍵をにぎるのは、今からおよそ百年まえ「絵封師」を名乗るものが、鬼ヶ谷一族の秘宝のありかを隠したという三枚の絵。絵封師の目的は? 秘宝の正体は? 探偵を夢見る伊緒と名探偵・夢水清志郎が、謎解きに挑戦する!


「名探偵夢水清志郎の事件簿」第3作。
 前作からおよそ2年ぶりとなった「夢水清志郎」セカンドシーズンの第3弾はシリーズ20周年記念作と銘打たれ、ファーストシーズンで主役を務めた亜衣ちゃんたち岩崎三姉妹やレーチに加え、作品の垣根を越えて数多くのはやみねキャラたちが入り乱れるオールスター作品です。
 『バイバイスクール』、『トム&ソーヤ』、『虹北恭助』、『虹北学園文芸部』 エトセトラエトセトラ――。ファンには馴染みのキャラクター、ワード、地名が次から次へと飛び出して、冒頭の登場人物紹介を眺めているだけでもニヤニヤが止まりません。
 そのため本作は「夢水清志郎」20周年記念作であると同時に他シリーズのエッセンスも多く散りばめられ、特に『TRICK 青春版』と『虹北恭助の冒険』の後日談的な趣が非常に色濃く、作品を存分に楽しみ倒すにはこれらを押さえておくことが必定といえるでしょう。

 思い返せば、私が小学生の頃、初めて講談社ノベルスというものに触れたのが『少年名探偵 虹北恭助の冒険』でした。この作品がなければノベルスコーナーで『クビキリサイクル』を発見することもなかったし、西尾維新を知らなければ本格ミステリの世界にも入っていませんでした。しかも作中人物と殆ど同じように年を経てきただけあって、「虹北恭助」のシリーズは自分にとって本当に大切で特別な思い入れのある作品なのです。
 あの響子ちゃんが野村響子から虹北響子となって、赤ちゃんを抱きながらダメ夫を「旦那」呼ばわりしているところには感慨よりも感動に近い気持ちすら沸いてきます。

 中学時代にあれほど教授にべったりだった岩崎三姉妹が高校生になってそれぞれ忙しくなり、いまや殆ど顔を合わせていないという関係性の変化も20年の時を歩んできたからこそ表現できるものであり、それがまた現実を生きる読者の心情にも重なってくるところが素晴らしい。
 昨年度『本ミス』の「みんなが愛した名探偵ランキング」では大学ミス研から夢水清志郎を支持する声が強かったりと、いまやミステリ読者の中にははやみねかおるで育ったという世代もぼちぼち出始めています。そういった、かつてリアルタイムで「夢水」を読んでいた層にこそ読んでほしい、20周年にこれ以上なく相応しいテーマでした。

 どう考えてもギャグパートにしか感じられない教授の日常に、本編の要で使あるトリックを仕組みもそのまま堂々お披露目しているのに気付かせないところもなかなかです。それにしても「恭助」の時間軸が「夢水」よりも10年近く前の話だったとは。今回、こうして大規模なクロスオーバーが描かれたことで、これまで不明瞭な部分の多かったはやみねワールドの大まかな時系列が整理できたのもファンには大きな収穫です。


スポンサーサイト



Comment

Comment_form

管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

ご案内

プロフィール

はろーすみす

Author:はろーすみす
シリーズものも平気で数年寝かせる積読家。本格ミステリとスター・ウォーズ小説を中心に読み漁り、新刊・話題作はあまり追っていません。

好きなミステリ作家は古野まほろ、はやみねかおる、西尾維新、霧舎巧。
ジャンル外では築山桂と小川一水。
講談社ノベルスをこよなく愛す特ヲタ。

当ブログはリンクフリーです。
お気軽にどうぞ。

カレンダー

02 | 2023/03 | 04
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31 -

ただいまの積読本

現在:456冊                        目指すは未踏の500冊! 最新の15冊を表示。                 冊数をクリックするとすべての積読本を見られます。

ブログ内検索

作家別作品アーカイブ

過去の読書記録はこちらから。 作家名が五十音順に、それぞれシリーズごとに見られます。

評価について

★☆☆☆☆ 破り捨てたい衝動に ★★☆☆☆ うーん。これはびみょ(ry       ★★★☆☆ 普通に面白いです ★★★★☆ 一読の価値アリ ★★★★★ 殿堂入り                ★×4以上は自信を持ってオススメ  ★×5はとりあえず読んでほしい傑作

2014年のベスト5

2014年に読んだ小説の       (暫定)ベスト5はこれ!!

2012年のベスト5

2012年に読んだ小説の        ベスト5はこれ!!

2011年のベスト5

2011年に読んだ小説の          ベスト5はこれ!!

1.トリプルプレイ助悪郎(2007年刊)   2.名探偵に薔薇を(1998年刊)             3.化物語(2006年刊)          4.時砂の王(2007年刊)                  5.天帝の愛でたまう孤島(2007年)

最近の記事

月別アーカイブ

ブロとも申請フォーム

アソシエイト

アクセス解析