2014.12/27 [Sat]
探偵小説研究会『2015本格ミステリ・ベスト10』
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★★★★☆
クラシックの発掘は今年も多いんですけど、そのために現代ミステリの中から本格として面白いものを
探す努力をしなくなるんじゃないかという問題が出てきますよね。
昔からの本格ファンは古典を読んで満足して、ああ、今年もレオ・ブルース先生は良かった、
で済んでるのではないかという問題提起が、座談会を始める前に出てましたけど。
国内最大規模のベストミステリ・ランキングのほか、特集は作家・評論家が選ぶ「古今東西名探偵ベスト10」。インタビューは岡田秀文・天祢涼の2本立て。毎年恒例の「ミステリ作家の予定と近況」も充実!
というわけで今年の『本ミス』は麻耶雄嵩『さよなら神様』が制しました。個人的な好みを申せば「神様ゲーム」シリーズは形式破壊を目指しすぎてミステリとしての体裁を脅かしている箇所も少なくなく、そこが自分の許容の範疇を超えてしまっていたりもするのですけれど、ジャンルの限界点に挑む意識の高さと凝った技巧は確かではあるので納得はできる結果かと。まあ「みんなが愛した名探偵ランキング」で並み居る著名な名探偵たちとメルカトル鮎が肩を並べているあたりに『本ミス』における麻耶人気が窺え、作家票で押し上げられている感も無きにしも非ずだったりもするのですが。
何にせよ、作家の人気投票かと見紛うばかりの惨状だった昨年度に比べ、今年は大方頷ける良いランキングになっているのではないでしょうか。
ただ、今年は特に10月終わりの大作の刊行が目立ち、大本命だった白井智之『人間の顔は食べづらい』が惜しくも20位圏外という結果に終わってしまったのは残念です。これを健闘と見るべきか、悔やむべきか。
印象の残りやすさから対象期間ギリギリでの発売を狙う傾向は毎年のことながら、投票者が取捨選択をしなくてはならない現状はセールスとしてもランキングの精度としてもあまり歓迎はできないと思うんですよね。このあたりの悪習を来年こそは改善してくれることを祈ります。
こうして振り返ってみると2014年はなかなかの当たり年でしたね。短編集よりも長編を読みたい自分には些かの物足りなさもありましたが、傑作揃いの2012年以来久しぶりの豊作といえる1年になった気がします。
ちなみにネット読者投票は今年もなしで完全撤廃された模様。その代わりといっては何ですが、映像本格、復刊ミステリ、時代歴史ミステリ、コミック、ゲーム、ライトノベルに続き、本年からネット小説と電子書籍の総括コーナーが新設されています。E☆エブリスタや小説家になろうといった一般投稿者の手に依る作品が続々書籍化されてベストセラーとなり、音楽業界(特にアニソン界隈)では歌い手やボカロPがプロとなるケースも増える中、これはまさに設けられるべくして設けられたコーナーといえるでしょう。時代の流れですかねー。
とりあえずは『早ミス』、『本ミス』、『このミス』、『俺ミス』と各種ランキング本を当たって興味を持った『帝都探偵 謎解け乙女』、『イーハトーブ探偵』あたりを確保してきました。岡田秀文のインタビューに出てきた『源助悪漢十手』も面白そうなので読んでみようと思います。
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