2014.12/07 [Sun]
麻耶雄嵩『さよなら神様』
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★★★☆☆
隣の小学校の先生が殺された。容疑者のひとりが担任の美旗先生と知った俺、桑町淳は、クラスメイトの鈴木太郎に真犯人は誰かと尋ねてみた。殺人犯の名前を小学生に聞くなんてと思うかもしれないが、鈴木の情報は絶対に正しい。鈴木は神様なのだから――。
「神様ゲーム」第2作。
講談社の児童向け叢書、ミステリーランドにて刊行された『神様ゲーム』の神様こと鈴木太郎の存在を用いて書かれた連作ミステリ。前作が(あの内容で)子供向けだったのに対して今回は最初から大人の読者を想定し、一行目で犯人の名前を公開するという縛りを設けての短編形式となっています。
設定だけ聞くといかにもトリッキーな作風に感じられはするものの、実際には前半3篇は普通の倒叙モノとさして大差なく、導かれた推理に確たる証拠はなく神様の言葉も正しかったどうかはわからないという結末に落ち着くあたりが唯一、麻耶雄嵩らしさを匂わせている程度です。
そんなパンチのなさから打って変わって、後半3篇は絶対無謬であり対岸で眺めているだけの傍観者であるハズだった神様までもが事件の構造に組み込まれていきます。予めネタを割り、真実しか語らない神様という絶対的な装置を前に、いかにして読者の裏を掻く真相を提示できるかという試みはまさしく作者の真骨頂といえるでしょう。
神様を突き放して解放されたようでいてその実、もはやちょっかいを出す価値もないほどに遊び尽くし、壊し切ったとも受け取れる悪趣味なラストは不意打ちで本文に挟まれる記号の破壊力も相俟って壮絶な怖気を感じさせます。
とはいえ、本格ミステリというジャンルの領域線をあまりに意識しすぎて踏み越えてはならないラインからはみ出してしまっているとの感想を抱いたのも前作と同じで、多くの偶然の上に成り立っていたり決して実現率の高くなさそうな推理に登場人物自身がツッコミを入れ、それを免罪符にそういうものだとして無理やり通してしまう姿勢にはイマイチ納得し難いところもありました。
このあたりを「さすがは麻耶雄嵩、やってくれるぜ!」と思うか「いや、それで良いならいくらでも手を抜けるじゃん」と感じるかによって、本作に向ける評価も大きく変わってきそうです。
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