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300冊の積読本もなんのその、本や映画の感想などをつらつらと述べてみたり。

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友桐夏『裏窓クロニクル』

裏窓クロニクル裏窓クロニクル
友桐 夏

東京創元社 2014-10-31
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★★★★☆
――裏窓の娘。
こそこそと盗み見て卑しい憶測を交わす者たちから与えられた呼び名であるのに、
不思議なほど反発はなく、すとんと腑に落ちるように受け入れられた。
そうか、私は裏窓の娘か。篁の冠よりはよっぽどいい。

数々の黒い噂がつきまとう、いわくつきの一族・篁。その当主の義理の娘であり、愛人の連れ子ということで蔑まれている「私」。ある日、私は篁を狙った事件の解決を依頼しに、何でも願いを叶えてくれるチカラを持つという「教会の魔女」に会いに行く。まもなく事件は解決したかに思われたが、私が魔女に頼んだのは別の願いだった……。謎めいた魔女に願いを告げた少年少女と、彼らに関わった人々が巻き込まれた30年にわたる悲劇。教会、学校、山間の豪華ホテル、それぞれを中心に起きた事件の真相とは?


 日本を陰で支配する六家がひとつ、経済の「篁」と教会に住まう美貌の女、「篁の魔女」をめぐるリリカルミステリ。『星を撃ち落とす』で創元から復活を果たした友桐夏の一般向け小説第2作です。
 少女たちの繊細な心の機微や関係を美しく描写しつつ、現代日本を舞台としているにはやや突飛とも壮大すぎるともいえる背景設定はライトノベル出身作家ならではでしょう。講談社ノベルスファンとしては「戯言シリーズ」の四神一鏡や殺し名、呪い名あたりを思い出しました。

 各章毎に語り手も舞台となる街も移り替わり、それぞれの時間、それぞれの場所で生きる少女たちの日常の一片が綴られてゆくのですが、ひとつひとつのエピソードには小さな謎こそ用意されてはいるものの、到底日常の謎と呼べるほどではありません。が、読み進めていくうちにそれらのエピソードがいつかどこかですれ違った人々のお話が少しずつリンクしているわけではなく、もっと密々に関わり合い、複雑に絡まり合っていた事実に気付かされます。
 登場人物の名前を積極的に出さずに紡がれるお話において、どの人物がその視点の誰であり、彼ら彼女らとどういった関係にあるのかこそが最大の焦点とされ、その繋がりがオープンにされることでサプライズへと通ずる考え抜かれた構造は紛れもなくミステリです。人物関係があまりに入り組んでいるために各自で相関図を書いて整理しないと軽く置いていかれるレベルです。

 全7話から成り立っている中で第5話のラストで衝撃の事実を明かして謎解きに移行させる構成からしても本作は決して各話に撒かれた伏線を最後に回収していく連作短編などでは決してなく、あくまでも長編として読むことを想定しているのでしょう。
 広げた物語を完全に畳み切っていない感も無きにしも非ずではありますが、凝りに凝られた作品だけに満足度は高いです。


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はろーすみす

Author:はろーすみす
シリーズものも平気で数年寝かせる積読家。本格ミステリとスター・ウォーズ小説を中心に読み漁り、新刊・話題作はあまり追っていません。

好きなミステリ作家は古野まほろ、はやみねかおる、西尾維新、霧舎巧。
ジャンル外では築山桂と小川一水。
講談社ノベルスをこよなく愛す特ヲタ。

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2012年に読んだ小説の        ベスト5はこれ!!

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1.トリプルプレイ助悪郎(2007年刊)   2.名探偵に薔薇を(1998年刊)             3.化物語(2006年刊)          4.時砂の王(2007年刊)                  5.天帝の愛でたまう孤島(2007年)

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