2014.11/28 [Fri]
森川智喜『半導体探偵マキナの未定義な冒険』
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★★★☆☆
私が何をやっているか、だって? それをわからない私だとでもいうの? ふふふ、愚問! 愚問よ、マキナ。
いわずと知れたこと、あなたも私もやることは同じ。私がやっているのは、決まっているじゃないの――
――探偵よ!
坂巻正行は17歳の男子高校生。のんびり帰宅部の大人しい青年だが、彼には非線形人工知能学分野の権威である祖父がいた。祖父は現役引退後、研究所にこもって人間そっくりのAI搭載探偵ロボットを開発、依頼人に派遣するボランティアをおこなっていたのだ。ある日、3体の探偵ロボットがエラーを起こし、勝手に町に出て「探偵」活動を始めてしまった。半導体探偵マキナと正行のコンビは、あちこちで「捜査中」と思われる「探偵」たちを、見つけ出すことができるのだろうか?
エラーを起こした探偵ロボットの行方を追うミステリ連作短編集。探偵活動によって人々に奉仕するため作られた4体のロボットのうち3体がエラーによって逃走、各々自由に動き回るロボットたちがとる奇妙な行動と言動の数々からいったい何をどう勘違いして現状に至っているのかを推理するホワイダニットに特化した作品です。
動機当てというジャンルはサプライズと説得力を同居させ、なお且つ従来の作品には見られなかった新しいパターンの行動原理を用意しなければならない都合上なかなか書くのが難しいジャンルではありますが、現実にはない探偵ロボットの存在を置くことで人間の思考の考え得る発想とはまた違った、独自の論理による納得度の高い動機を捻出することに成功しています。
落書き事件、捨てネコ事件の犯人探し、「守れ」と命じたのになぜか襲ってくる理由……。探偵ロボットたちの奇妙な行動の裏には探偵の探偵たるべき形、ミステリにおける真相追求の限界域といった探偵小説らしいテーマも潜み、物語を通してジャンル全体のパロディ的側面を覗かせている点も読みどころです。「DEBUG 1」の真相なんかは本格好き、ミステリマニアであるほどに思わず膝を打つことでしょう。
どこか浮世離れした童話のようでもあり、しっかり本格しつつもトリッキーな作風は他の誰にも出せない森川智喜ならではですね。
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