2014.11/27 [Thu]
森川智喜『なぜなら雨が降ったから』
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★★★☆☆
ある雨の日「Yuregi Detective Office」の表札がある部屋の前で、女の人が一人で煙草を吸っていた。「あの、もしかしてここの事務所の方ですか」「そうよ」「探偵さん……ということですか?」「そうなるわね」「すごいですねえ。あの。探偵さんってことは、推理とか、するんですか?」「まあね。あなた、もしかして最近、新しく靴を買ったんじゃない?」なんとゆかしき“ホームズ流!”かくして大学生の野崎と、雨女探偵・揺木茶々子(ゆれぎちゃちゃこ)の探偵活動がはじまる。
――ええい、『本ミス』発売が近いから一挙二本更新じゃ!!
事件の日には雨が降る、晴れた日には仕事がない雨女探偵・揺木茶々子が活躍する連作短編ミステリです。一風変わった設定や突飛な世界観を基にミステリを構築する作者にしては珍しく普通路線の作品ですが、そこはさすがの森川智喜。「なぜなら雨が降ったから」を決めゼリフに、収録される5篇すべてが雨を謎解きのカギにしたミステリとなっています。
推理の決め手を「なぜなら雨が降ったから」に統一するということは下手をすればワンパターンに陥ってしまいがちな上、また読者に対しても予め答えに近いレベルでヒントを与えているに等しいのですが、手を替え品を替え単調なものにならないよう工夫されています。
しかしながら、そうした縛りから敢えて狙ったと思われるバラエティ感がごった煮状態を生んでしまっているのも確かです。殺人事件から日常の謎、昔話の合理的な解を考える推理ゲームがあったかと思えば雨ではなく雪の日もあるわで、通してみると各話のテイストとクオリティにかなりバラつきが見られ、どちらかといえば散漫な印象を受けました。
ミステリとして最も極まっているのは最終話「狐の嫁入り」でしょうか。雨の日に生まれた生まれた不可解な状況を、雨の日だからこその明確且つ明瞭な1ワードで解決してしまう鮮やかさに惚れ惚れすると同時に、全篇このくらいの質を維持してくれていればと欲が出ないこともありません。
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