2014.11/22 [Sat]
青崎有吾『風ヶ丘五十円玉祭りの謎』
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★★★★☆
いい話なのかも知れないが、俺は嫌いだな。いろんな意味で気に喰わん
相変わらず学校内に住んでいる裏染天馬のもとに持ち込まれる様々な謎。学食の食品をめぐる不可思議な出来事、吹奏楽部内でのトラブル、お祭りの屋台のお釣りにまつわる謎、裏染の妹の華麗な謎解き。天才・裏染天馬とその妹が、学内外の不可思議な出来事の謎を解く。
「裏染天馬」シリーズ 第3作。
アニヲタで学校棲まいのダメ人間・裏染天馬が様々な事件を解決する学園ミステリの第3弾はシリーズ初の日常の謎ものミステリ。著者としても初の連作短編形式となる作品です。
第1話「もう一色選べる丼」ではシリーズ既刊の2冊同様、食べ残しの二色丼という現場に残された少なすぎる手掛かりから快刀乱麻の推理で犯人と事件の全体像を解き明かし、“平成のクイーン”の実力をまざまざと見せつけてくれます。
続く「針宮理恵子のサード・インパクト」は『体育館の殺人』に登場した不良の女子生徒を語り部に据えた一篇で、学園ミステリらしい謎と解決以上に、彼女の悩みと成長を描き出して天馬の小憎い心遣いと共にザ・青春ミステリ!といった爽やかさが快く、キャラクターの人となりの掘り下げの面でも満足な内容でした。
――と、収録されている5作品のどれもが水準以上をキープしており、謎解きに関して大きな不満はない反面、青崎有吾という作家に寄せる期待を勘案した場合、もっと凄いものが書けるのではと強く思うのもまた事実です。長編で見せたキレのある推理と徹底したロジックがいまいち奮っておらず、冒頭の「もう一色選べる丼」以外は良くも悪くも“フツーの日常の謎”の枠に収まってしまっています。青崎有吾の畳み掛けるようなロジックはある程度の紙幅があるからこそ最大限の効力を発揮するのであって、謎も解決も急がねばならない短編ものでは実力を活かし切れていないように感じました。
登場人物たちにも愛着が沸いてきてこれはこれで大変楽しめはしたのですけれど、シリーズの1本として見るとやや物足りなさが残るかもしれません。
天馬の勘当がアニヲタ同士の抗争に起因していただろうことには笑いました。妹といい父親といい、ダメすぎる、裏染家。
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