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300冊の積読本もなんのその、本や映画の感想などをつらつらと述べてみたり。

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望月守宮『無貌伝 ~奪われた顔~』

無貌伝 ~奪われた顔~ (講談社ノベルス)無貌伝 ~奪われた顔~ (講談社ノベルス)
望月 守宮

講談社 2014-10-07
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★★★★☆
でも、私にはあなたを感じることができる。
巾裂はヒトデナシだから、あなたのことなんて知らないから、だからあなたを感じられるんです。
なんて素敵なのかしら。私にひどいことをしたあなたを、私だけが感じられる

探偵・秋津は、封印された真実を語り始める。秋津と助手の相原が、人の顔を奪う怪盗・無貌を追った日々――。それはいずれ破滅へと至る彼らの、かりそめの幸福の時間。秋津は無貌との因縁に決着をつける覚悟をし、愛する妻のもとを去り、孤独な戦いに身を投じる。相原は過去と決別し、大蛇と呼ばれる殺人鬼と対峙することで、数多の顔を持つ怪盗の手がかりを得ようとする。すべての仮面を脱ぎ捨てた無貌の正体に、二人は何を見る……!?


「無貌伝」第6作。
 デビューから続いてきたメフィスト賞受賞作のシリーズ最終章前編です。前作ラストの衝撃の結末を受け一気にクライマックスへ雪崩込むかと思いきや、無貌被害者の遺族たちが集められた寺に連れられた秋津が若き日の自分と無貌との因縁を語る過去パートへと突入します。
 活動を始めた無貌とそれを追う秋津、彼を支える遥と相原――『人形姫の産声』がエピソード0だとしたら本作はエピソード1とでも呼ぶべき内容で、三探偵と称される前の秋津らの在りし日の記憶が相原の目線から描かれます。『綺譚会の惨劇』の「無情のひと」に登場した相原と大蛇が大きな役割を果たし、様々な事実が明かされ強烈な“引き”を放つもどこか番外編めいた位置付けに感じた4作目が実は「無貌伝」という物語を展開する上での最重要パーツであったことには驚きました。『綺譚会』に収録されている短編のひとつひとつも『人形姫』も、そのどれが抜けても「無貌伝」は成立せず、また不要な話も余剰なエピソードもまったくもって存在しない実に削ぎ落とされた完璧な一本線なのです。
 「無貌伝とは、こういうお話だったのです」とのコメントどおりシリーズ全体に仕掛けられた最大のカラクリも明かされ、いままで見てきたセカイを根底からひっくり返す構成もお見事。6年間続いてきたシリーズだけに、その破壊力も抜群です。

 あとは流れに任せ、最終巻にその身を委ねるのみですが、ランキング本発売までに消化しておかなければならないミステリを優先する都合上、あと半月は完結作をお預けしなくてはならないのが辛いです。
 それはともかく私の中で望月守宮はヤンデレを書かせたら天下逸品というところまできているのですが……。儚く、弱く、不安定で怖ろしく、それでも守ってあげたくなるような愛おしさも兼ね備えた大蛇(と遥さん)の描写が絶妙すぎる。


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はろーすみす

Author:はろーすみす
シリーズものも平気で数年寝かせる積読家。本格ミステリとスター・ウォーズ小説を中心に読み漁り、新刊・話題作はあまり追っていません。

好きなミステリ作家は古野まほろ、はやみねかおる、西尾維新、霧舎巧。
ジャンル外では築山桂と小川一水。
講談社ノベルスをこよなく愛す特ヲタ。

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2012年に読んだ小説の        ベスト5はこれ!!

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1.トリプルプレイ助悪郎(2007年刊)   2.名探偵に薔薇を(1998年刊)             3.化物語(2006年刊)          4.時砂の王(2007年刊)                  5.天帝の愛でたまう孤島(2007年)

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