2014.10/17 [Fri]
深水黎一郎『大癋見警部の事件簿』
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★★★☆☆
何だ違うのか。くそ、この大黒とやら、たかが被害者の分際で、下らん小ネタを入れやがって!
この男、事件を解決する気がまったくない。いつも現場で居眠り、髙イビキ──なのになぜか警視庁捜査一課の中でも検挙率100%を誇る「警視庁最悪の警部」が、本格ミステリーの約束事を、次から次へとなぎ倒す。初心者からマニアまで大癋見警部が満足させます!
「芸術探偵」シリーズ 外伝の2。
デビュー作『ウルチモ・トルッコ』と同じく、著者の看板作品である「芸術探偵」とキャラクターが共通した作品で、本格ミステリにおけるお約束の様式やガジェットの数々を徹底的に弄り倒す連作アンチミステリです。
収録されているのは計11篇。鉄壁のアリバイトリックや密室状況、全身をバラで装飾された死体といったいかにもなシチュエーションの末に待っているのは脱力気味なオチであり、そのどれもに本格読者をあざ笑うかのような結末が待っています。かといって単なる内輪向けのシュールギャグに終わることはなく、それぞれにそれなりなミステリ的着地点が用意されているのもポイントで、ミステリ好きの登場人物によって各章毎にテーマとなる題材についての解説も挟まれるので、マニアのみならず本格とは何ぞや?という人でも安心です。
とはいえ、およそ20ページ強の短編がぎゅうぎゅうに詰め込まれていることもあり、通しで見るとイマイチまとまりが悪く、忙しなさを感じさせるのも確かです。話によってはネタを成立させるためにかなり強引に押し進めている箇所もあり、たとえば密室の話では公安があまりにも無能だし、JAXAの殺人は果たして作品世界の論理においても実現可能かは甚だ疑問。作中で連発されるメタ会話がフェア/アンフェアの境界線を曖昧な位置まで引き下げ、会話文の中に恣意的な誤記を行った上で叙述トリックめいたオチに持っていくなど、そこを甘さと見るかギャグだから許容の範囲内とするかで評価も大きく割れそうです。
個人的には「図像学とダイイング・メッセージ」のくだらなすぎる畳み掛けが好きでした。バカだなぁ。
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