2014.10/13 [Mon]
探偵小説研究会『2014 本格ミステリ・ベスト10』
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★★★☆☆
ロング・インタビューは北山猛邦、深木章子。若手のホープ円居挽×森川智喜対談など、多くの作家・評論家を輩出している大学ミステリ研究会を特集! もちろん国内・海外ランキングから映像・評論・ゲームまで網羅した本格年鑑。
2014年も残り少なくなり、ミステリランキングの対象期間も終わりが迫ろうとしていますが、昨年ぶんの感想記事を未だに上げていなかったことに気付いたのでいまさらながら雑感のみ述べておこうと思います。
2013年はこれぞ!という突出した作品が殆ど見られない極めて不作な年でした。そんな中、ランキング1位は麻耶雄崇『貴族探偵対女探偵』、2位が青崎有吾『水族館の殺人』、3位に梓崎優『リバーサイド・チルドレン』と続くも、ベスト10には法月、歌野、島荘、よねぽとベテラン勢が目立ちます。ここで印象的なのは評判が芳しくなかった作品、読んでみてそこまでではないだろうと感じるミステリも多くランクインしている反面、高林さわ『バイリンガル』(30位圏外)、森川智喜『一つ屋根の下の探偵たち』(30位圏外)、菅原和也『CUT』(30位圏外)、赤月黎『魔女狩り探偵春夏秋冬セツナ』(ラノベミステリのコーナーですら触れられず)……等のあまりネームバリューのない作家の秀作がことごとく落選している点です。
特に、曲がりなりにも本格ミステリを標榜するのなら『バイリンガル』は2013年に外せない一作のハズで、こうした意欲的で独創性のあるミステリがまったく拾われず、周木律『眼球堂の殺人』や市川哲也『名探偵の証明』のような、どこがどう評価されたのかわからない凡作がベスト20に入ってくる現状は理解し難いものがあります。今回のランキングを眺めていると、もはや投票がミステリとしての精度や出来に依るものでなく、新人賞注目度や作家本位の権威主義的なものへと変わりつつあるのでは?といった危惧さえ覚え、『本ミス』の今後が不安になりました。
例年であればこうした本ランキングから取り零された良作の受け皿となっていたネット投票ランキングも参加者の減少からか廃止され、「これ一冊で今年の本格のすべてがわかる」本には到底なり得ていないと言わざるを得ません。
あまりにも全体のフォローができていないため、昨年は『俺ミス』こと『本格ミステリー・ワールド2014』も後から購入しました。今年は納得のいくランキングを期待したいものです。
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