2014.10/12 [Sun]
皆川博子『アルモニカ・ディアボリカ』
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★★★★☆
18世紀英国。愛弟子エドらを失った解剖医ダニエルが失意の日々を送る一方、暇になった弟子のアルたちは盲目の判事の要請で犯罪防止のための新聞を作っていた。ある日、正体不明の屍体の情報を求める広告依頼が舞い込む。屍体の胸には“ベツレヘムの子よ、よみがえれ! アルモニカ・ディアボリカ”と謎の暗号が。それは、彼らを過去へと繋ぐ恐るべき事件の幕開けだった。
「開かせていただき光栄です」第2作。
第12回本格ミステリ大賞を受賞した『開かせていただき光栄です -DILATED TO MEET YOU-』の続編で、18世紀イギリスで解剖学教室を営むダニエル先生の弟子たちと盲目の判事とその助手で姪でもあるアン=シャーリー・モアが不可解な遺体の謎に迫るミステリの第2弾です。
前作から5年後、新たな生活を送っていた彼らが再び遭遇することになった事件を通してかつての悲劇を見つめ直し、犯人となった人物の掘り下げや真相そのものに別の解釈を与えるなど、単純な続編というよりは後日談の色合いが強く、事実上の第二部といえる内容になっています。そのため、本書に入る前に1作目を押さえておくことは必定でしょう。
本格ミステリとしての趣向や精度は前作に譲りこそすれ、いくつかの証言に見られる食い違いや齟齬を整理し、細やかに配されたリンクから隠された全体像を浮かび上がらせていく手腕はさすがのもの。ベツレヘムに秘された残酷で凄惨な真実と、アルモニカにまつわる淡くも強い恋物語、アルたち元解剖教室の面々の行方――。圧倒的な筆力と格調高い文章で綴られた切ない物語は読み応え、満足度の面において前作に何ら劣ることありません。
『開かせていただき光栄です』を読んだのなら迷わず、未読ならばまずは前作からどうぞ。1ミリたりとも損はさせません。
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