2009.11/04 [Wed]
初野晴『初恋ソムリエ』
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★★☆☆☆
あなたの口から恋の香りがしますよ。
甘いいちごとミルクの香り。甘酸っぱい青春の香りですね。
初恋に秘められた謎を追え! 廃部寸前の弱小吹奏楽部に所属する穂村チカと上条ハルタ。吹奏楽部の甲子園「普門館」を目指して日々練習を重ねる二人のもとに難事件が?
「チカ&ハルタ」シリーズ 第2作。
あと2、3年のうちに一般に人気が出てくるだろうと思っていた初野さん。オビの推薦文なんかを見てみると、思ったよりその時期は早くきているかもしれないと思う今日この頃。
前巻で展開されたエピソードなんかにも折々に触れられているのが良いです。
しかし無駄に甘々なタイトルと表紙にも関わらず、扱っているテーマは結構シリアスだったりして、かなりの表紙詐欺作品です、これ。
『退室ゲーム』の続編にあたる本作ですが、実際のところ前作に比べてミステリっぽさがかなり削がれている気がします。普通の連作短編集として読むぶんには何ら問題ないのですが、ミステリだと構えていると「それで、私たちは何を推理すれば良いの?」って感じでかなり肩透かしをくらいます。
ミステリっぽい内容の「アスモデウスの視線」なんかも初野さんお得意の図版が出てきたりするのですが、それが示す事柄が次に展開される推理の根拠にまったくなっていないというのはミステリとして致命的。ハルタの推理はあくまでも推察に過ぎず、そこに至るまでの論理が明確ではないし、推理の披露の後に改めて図版をいくら眺めても明確に答えが導き出せないのはどうかと思います。
実は問題点はもうひとつあって、全体的に描写の書き込みに欠けているんですよね。
(以下、ネタバレ含む)
特に目立つのは動機の欠落。「アスモデウスの視線」ではなぜ犯人がそういう行動に出たのかがまったく謎のままだし、「初恋ソムリエ」にしても“まあ何らかの恨みがあったのだろう”ということは推測できても、それが具体的には何であるかを描いていないためにストーリー自体が薄っぺらく見えてしまう。さらにいえば「初恋ソムリエ」では本編中におばさんが参加していたものが“何だったのか”を具体的に明記しておらず、だいたい想像はついてはいたものの参考文献欄を見るまでは確証が得られなかったというのもネック。しかもおばさんが変な寓話に喩えて初恋のエピソードを語るものだから、どこまでが喩え話なのかが判断つきにくく、最初、問題である“おにぎり”すらも喩えのひとつかと思ってしまいました。とにかく色々端折っていてわかりにくい!
芹澤さんがカイユのことを好きになった契機なども描写が省かれています。まずそれ以前にカイユと芹澤さんの絡み自体が無かったのに、いきなりそんなこといわれても唐突過ぎてついていけん。キャラ立ての作品なんだし、そこらへんは丁寧に描いて欲しかったなぁ。
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NoTitle
ちょっと展開が早すぎるかなと思うところもあって、
一編一編にもう少しずつ分量があったらなぁと感じました。
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