2014.09/29 [Mon]
瀬尾こると『ロマネスク』
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★★★☆☆
故郷の神殿から盗まれた金の巣と瑪瑙の卵を捜して放浪するバシリスクは、内憂外患に苦しむ砂漠の国ケ・イキョーに足を止めた。心ならずも王位継承の相剋に巻き込まれ、酷刑に処せられるなどの艱難を凌ぎつつ、ケ・イキョーの安寧を見届けたい一方で己の使命を果たせない焦躁に駆られて、バシリスクの胸臆も揺れる。
悪人によって盗み出された故郷の神殿に祀られる宝物を求め旅する英雄が、ひょんなことから身を寄せた砂漠の王国での政争に巻き込まれるファンタジー調のミステリです。砂漠と幻想に彩られたエスニックな世界観の元、巨体を持ち獰猛で凶悪な怪物・銅鑼湖爾猗や毒虫・ムスカムの生息する3つの迷宮からの脱出と重臣殺害事件の真相、すべての黒幕との対峙が描かれます。
罪人が無罪放免を懸けて放り込まれる難攻不落といわれるダンジョンの攻略や犯人消失トリック、巧みな伏線とその回収、最後になって明かされる挿話の語り手の正体等、ところどこに読者を驚かせようとする要素が見られはするものの、それらはあくまでも“脇”にすぎず、本筋はあくまでも内政ファンタジー。殺人事件そのものはそれほど時間を掛けずに解答まで辿り着き、あまりミステリ部分に重きを置いた書き方にはなっていません。
かといって、それじゃあミステリではないのかというと決してそういわけでもなく、創元推理文庫から出ることに違和感のない程度には本格のエッセンスが漂っている。ジャンル判断の難しい作品です。
その先に待っているだろう新たな冒険を予感させるラストシーンは、壮大かつ悠然としていて実に『ロマネスク』のタイトルに相応しい。昨今流行のVRMMOものに多い西洋的なハイファンタジーとはまた違った、古き神話を紐解いたかのごとき硬質な伝説譚、これはこれで楽しませて貰いました。続きも出るのかな?
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