2014.09/19 [Fri]
西尾維新「りぽぐらの忍び 忍法・百五十分身の術」
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★★★☆☆
千鳥――それがあなたを殺す者の名前です
戦国最強と呼ばれる男・武田信玄が、徳川家康をたたく! 有名な三方ヶ原の戦いを完全収録! 家康の切ない逸話も完全収録(笑) そして千鳥が拷問を受ける展開に……。西尾維新による、忍び・千鳥の戦。連載誌ヤングアニマルで話題となった連載150回記念電撃寄稿を豪華収録!
『りぽぐら!』の挿画を担当して貰った縁で、西尾維新が重野なおき『信長の忍び』の連載150回記念に書き下ろした短編小説。
『信長の忍び』の凄いところは、燃えと萌えが混在し4コママンガなのにドラマとしての大河性が盛り込まれ、先々のストーリーが気になって仕方ないというレベルで内容を盛り上げている点でしょう。4コマといえばくすっと笑える箸休め的なものが多い中、超巨弾戦記ギャグ4コマの名に違わず“物語”で魅せる作品となっているのです。
第8巻では織田と武田が本格的に衝突し、囚われた千鳥が拷問(指の爪の裏側に竹串を刺される!)を受けるハードでシリアスな展開が続く中、西尾維新の小説もまた合戦場での敵方から見た千鳥の化物らしさ、異形さを描いたものとなっており、このあたりが西尾維新の創作テーマである「道を外れたやつらでもそこそこ楽しく、面白おかしく生きても良いんだよ」に通じているのも興味深い。
150回を記念して、千鳥の分身という体で本文中に150の“ちどり”を紛れ混ませるなどの言葉遊びも実にらしくはあるものの、ぶっちゃけ本編の読者はこういった堅苦しい実験小説よりも「化物語」に見られるような賑々しい掛け合いをする帰蝶や千鳥、信長の方が読みたかったんじゃなかろうかと思わないこともありません。倉坂鬼一郎の『波上館の犯罪』と同じく、膨大な労力が掛かっているわりに必ずしも読み手のニーズと合致しない誰得感が漂っているのも事実でした。いや、作者得なんでしょうけれど。
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