2014.09/15 [Mon]
碇卯人『杉下右京のアリバイ』
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★★★☆☆
右京は休暇中のロンドンで、殺人事件の捜査に協力することになる。被害者宅の防犯カメラには、そこから150キロ離れたバーミンガムでマジックショーを繰り広げていたはずの奇術師の姿が映っていた。しかも、彼はステージ上で殺人予告を行い、殺害時刻には短刀を片手にテレポートを行ったという。右京は不可能犯罪の真相を追うが……。
ドラマ『相棒』のオリジナル小説シリーズ 第4作。
連続ドラマ版のノベライズも手掛けているミステリ作家・鳥飼否宇が毎年発表している、右京さんが単体で活躍するスピンオフ小説の最新刊です。
収録されている2篇はどちらも Season 11 と Season 12 の間の出来事で、それぞれ『X DAY』時のロンドン旅行の最中とその後に香港に渡りカイトくんと出逢う前夜に遭遇した事件が綴られます。悦子と思しき人物への言及があったりもして、1作目から変わらぬトーンを貫きつつも本編に合わせて着実に時が流れていることを感じさせます。
通常、アリバイ崩しというと犯人視点の倒叙ものが多いのですけれど、本作ではそういったスタンダードな形式に捉われず、両篇共にあくまで犯行方法と犯人当てを議題にしている点が特色です。舞台上での殺人予告とテレポートのカラクリを探る第1話「奇術師の罠」は共犯者断定への手際が鮮やかである反面、決め手となるネタは21世紀を10年過ぎても未だにこれかと思わせないこともない。第2話もミステリ的にそれほど凝った内容とはいえず、初級者向けな印象は相変わらず。
このシリーズは謎と解決にもう少しオリジナリティと難易度が欲しいところです。
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