2014.09/07 [Sun]
早坂吝『○○○○○○○○殺人事件』
![]() | ○○○○○○○○殺人事件 (講談社ノベルス) 早坂 吝 講談社 2014-09-04 売り上げランキング : 1203 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
★★★★☆
だが、敢えて言わせてもらおう。
んなモン分かるかボケッ!
アウトドアが趣味の公務員・沖らは、フリーライター・成瀬のブログで知り合い、仮面の男・黒沼が所有する孤島で毎年オフ会を行っていた。沖は、今年こそ大学院生・渚と両想いになりたいと思っていたが、成瀬が若い恋人を勝手に連れてくるなど波乱の予感。孤島に着いた翌朝、参加者の二人が失踪、続いて殺人事件が!さらには意図不明の密室が連続し……。果たして犯人は? そしてこの作品のタイトルとは?
第50回メフィスト賞受賞作。
『メフィスト』誌上での座談会でも物議を醸し、女性編集部員退去(結局、叙述トリックで居残っていましたが)の異例な事態まで引き起こした問題作。
冒頭から「タイトルの“〇〇~”に入ることわざを当てよ」との読者への挑戦が叩きつけられ、いかにもキャッチーなイロモノ感で読者の興味を惹きますが、いざ読み終えてみるとそんなものは些事でした。探偵役のキャラ設定、事件の真相、推理の工程――そのどれもが強烈すぎるほどのインパクトを残し、冗談抜きにこの作者は馬鹿なの?死ぬの?というレベルでぶっ飛んでいます。
絶海の孤島に仮面の主、針と糸で構成された密室等の本格ミステリにおける王道のガジェットが尽く下ネタに奉仕し、すべてのエロ要素が謎解きのために機能する。平成のこの時代になって敢えて針と糸で密室を作る理由やその活かし方、女性陣の意識を奪ったトリック、各所に配された伏線など、ミステリとして見るべき点も非常に多く、テクニカルな作品であるのは確かなのです。
しかしながら、それら本格としてのスキルのすべてがあまりにも出オチ同然なネタのために浪費されるくだらなさ。技量が高ければ高いほどその馬鹿馬鹿しさに拍車が掛かり、笑いを誘います。「めちゃくちゃ頭は良いのに人間的におバカな男子中学生が書いたミステリ」とでも言うのでしょうか。良い意味でも、悪い意味でも酷すぎる。
チャレンジ精神では2008年の汀こるもの『パラダイス・クローズド』以来のインパクト。そりゃあメフィスト賞でなければ世に出てこなかった作品ですけれど、こういう路線のミステリを求めていたかというとちょっと違うような……。いや、笑いましたけどね。爆笑でしたけど。
オススメはしません。品性の欠片もなくてもOKという方のみ手に取ってください。とりあえず、本格ミステリの歴史にその名を刻んだであろうことは間違いありません。
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