2014.09/27 [Sat]
水生大海『転校クラブ シャッター通りの雪女』
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★★★★☆
お父さんに連れられてあちこち転校してるって言ってたよね。どうせまたいなくなるんだろ。
中学二年生・理の今度の転校先は、ヤンキー群れるシャッター商店街のある地方都市。家族を残して消えた女、取り壊されていく商店と大人たちの深刻な対立が、決定的な悲劇を生んでしまう。友人が巻き込まれていくのを我慢できない理は、やがて事件を解き明かすのだが……。
「転校クラブ」第2作。
転校生向けSNS「転校クラブ」を利用している中学生、早川理が引っ越し先の街で殺人事件に巻き込まれるミステリ。デビュー作の『少女たちの羅針盤』で大技をぶちかまし鮮烈な印象を残すも、最近はイヤミス方面での活躍が目立っていた著者だけに、本格色の強いシリーズに戻ってきてくれたのは喜ばしい。その期待に違うことのない、非常に良い本格ミステリでした。
舞台は前作からひと月後。海の近くの開けた街から打って変わって、今回の転居先となるのは治安の悪い地方都市。不良の跋扈する荒んだシャッター街の空き店舗にて見つかったホームレスの死体に続いて仲良くなった同級生の父親までもが何者かに殺害され、理は真相究明に乗り出します。
第一の事件こそ大した驚きはないものの、メインとなる第二の事件の解決編では怒涛ともいえるほどに全体像が二転三転し、終盤30ページの密度は凄まじいのひと言です。学校では授業もままならず、人は減る一方で街全体が閉塞感に覆われて息苦しく、人々は疲弊しきっている。犯人の極めて緻密な計画性と、それ以上に淡々と物事を運ぶ冷酷さが浮き彫りになってくるにつれて怖気が走ると同時に、いつの間にか壊れていってしまっていた心、ネジが外れざるを得なかったやるせなさを思うと胸の内を奥底から抉られます。
そして犯人の心の叫びが痛いほど伝わってくるからこそ、真実の追求が本当に正しいことなのかがわからなくなってくる。探偵による断罪の是非が「転校」というテーマと絡んだ、宿命と呼ぶには生易しすぎる終着点はあまりに苦く、あまりに辛く、あまりに酷で、一読、忘れ得ぬ印象を残すハズです。
パステルなピンクとかわいいイラストに騙されて手に取ると間違いなく後悔します。重い。
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