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映画『GODZILLA ゴジラ』

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★★★★☆
1999年フィリピン。石炭採掘現場で謎の陥没事故が起こる。事故現場に急行した芹沢猪四郎博士はそこで化石となった巨大生物の骨とそこに寄生していたかのような物体を発見する。物体は二つありそのうち一つからは既に何かが抜け出し海へ向かった跡が残されていた。一方、日本の原子力発電所で働くジョーは、突如として発生した異様な振動に危険を感じて運転停止を決意。だが、振動は激しさを増して発電所は崩壊し、一緒に働いていた妻サンドラを亡くしてしまう。それから15年後、アメリカ軍爆発物処理班の隊員である、ジョーの息子フォードは、日本で暮らす父を訪ねる。原発崩壊事故の原因を調べようと侵入禁止区域に足を踏み入れた二人は、そこで思いも寄らぬ光景を目にする。  (2014年 アメリカ)


「ゴジラ」シリーズ 第30作。
 日本が世界に誇る怪獣王、『ゴジラ』がハリウッドにて再びの映画化。公開後1ヶ月以上経っていまさらながらに感想記事です。
 世界中からコレジャナイと叩かれた98年版ハリウッド『GODZILAA』(通称『エメゴジ』)から16年、日米通算30作目に当たる本作は日本人にも馴染み深い正統派の対決モノ怪獣映画となりました。
 私自身は従来の「ゴジラ」ではあり得なかった生物としてのゴジラという視点を導入し、日本のゴジラとは異なるゴジラ像を提示しつつも核によって生み出され、ヒトの都合によって始末されざるを得なかった哀しき存在としての“中心”を外さなかった『エメゴジ』は大好きな作品ですし、あの映画を駄作扱いする人間は大衆意見に流されたクソ野郎とさえ思っているレベルですが、あちらはあくまでも『オール怪獣大進撃』や『GMK』、『FW』のような長い「ゴジラ」の歴史の中にたまにある亜流であったこともまた確かです。
 対して、本作は正統派の対決路線。ゴジラと敵怪獣が激突する日本人が「ゴジラ」と聞いてまず思い浮かべる内容を、ハリウッドの最新技術で映像化させた王道の「ゴジラ」映画となっています。

 その迫力は圧倒的であり、ムートーによって引き起こされる大規模破壊、ゴジラ上陸の余波で迫りくる津波など、徹底的にリアルなディザスター描写は日本映画では今後何十年掛けても敵わない域でしょう。『パシフィック・リム』のときもそうでしたが、このクオリティで“わかっている”映画を作られた日には、もはや日本特撮は相手になりません。
 今回監督を務めたギャレス監督は筋金入りの『ゴジラ』ファンであり、日本側の唯一の依りどころであった「あれは怪獣じゃなくてクリーチャーだ」という反論意見でさえ通じない、正真正銘の怪獣映画なのです。
 特に大きな印象を残しているのは敵怪獣のムートーで、時に自分を研究対象にした人間に敵意を剥き出しにし、オスとメスが互いに求め合って核弾頭を口移しで渡す場面、わが子を失い怒りに駆られる等、実に感情豊かに描かれています。この愛嬌とキャラクター性が単なるクリーチャーと怪獣とを大きく分けるポイントでもあります。
 触手を多く持ち一見軟体生物っぽいくありつつも、いかにも中に人間が入れそうなフォルムであるところも日本の怪獣らしさが窺えて素晴らしい。
 2000年以降、「ゴジラ」映画ではオルガ以外の新怪獣(メガニューラとメガギラスはメガヌロンの進化形、モンスターXとカイザーギドラはキングギドラの亜種なので除く)が登場しなかったこともシリーズの可能性を狭め、作品を内向きにして制作中断となった一因であると思っていた自分としては、久々に新規デザインの「ゴジラ」怪獣を拝めたことも嬉しかったです。

 一方でゴジラの扱いにはやや不満が残り、感情表現豊かでバックグラウンドがよく描かれているムートーに対し、主役であるゴジラが何を考え、どうしてムートーを追ってきたかの動機付けがいまいち弱い。自然界のバランサーである云々の説明があるにはあるにしろ、ゴジラ側の感情がはっきり見えてこず、究極的にゴジラがゴジラである必然性が薄かったのは「ゴジラ」映画として微妙なところでもありました。
 この点、ゴジラの考えていることが目に見えて伝わってくる『エメゴジ』の方が、ゴジラ主役の怪獣映画という観点では軍配が上がるでしょう。
 発射されるまでの背ビレの発光であそこまで期待を持たせておいて、いざ吐かれてみると意外としょぼい放射火炎といい、“ゴジラ”に関してはあまり上手に描けていたとは言い難いです。

 さんざん俎上に乗せられる核への警鐘にしても、本作『GODZILLA』では大きく扱っていながらアメリカ軍は核に頼り、それをムートーに奪われてしまいます。それだけならば核の使用に対するアンチテーゼともいえそうですが、問題はその核爆弾が最終的に爆発しておきながらその後の被害状況をまるで映さない。核の負の面をゴジラという記号に任せ、爆発までのカウントダウンでドラマ的な緊迫感を持たせただけで、それによる事後処理の部分がリスク丸無視でだいぶ雑になっているのも頂けません。
 私は初代原理主義者ではないし、シリーズ通して「ゴジラ」には反核メッセージが不可欠だとは決して思ってはいないけれど、それでも自分から話の中心に掲げているにも関わらず、数多あるパニック映画の常道以上の使い方をされずに終わっているのはダメでしょう。あれで終わりなら、何のための核への警鐘だったの?というか、さすがは核の脅威も娯楽映画のパーツでしかないアメリカ的楽観さというか。
 こちらも最後まで核を持ち出さなかった『エメゴジ』と比べるとうーん、という感じ(その代わり、エメゴジは通常ミサイルで死ぬ雑魚と誹りを受けることになるわけですが)

 そうはいっても、ここまで実在感のある怪獣映画は邦画では到底望めなかったものです。たとえ日本で新作「ゴジラ」が作られたとしても、大コケするのは目に見えています。日本では実現不可能だったゴジラの復活を全世界大ヒットという最高の形で見事に果たしてくれたギャレス監督とレジェンダリーピクチャーズには感謝の言葉しか出てきません。
 次作は4年後、その前に国内ではガメラの復活も控えていますし、まだまだ怪獣ブームは続きそうです。何の巡りあわせか、今回の『GODZILLA ゴジラ』も「平成ガメラ」成分が結構高かったですしね。


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はろーすみす

Author:はろーすみす
シリーズものも平気で数年寝かせる積読家。本格ミステリとスター・ウォーズ小説を中心に読み漁り、新刊・話題作はあまり追っていません。

好きなミステリ作家は古野まほろ、はやみねかおる、西尾維新、霧舎巧。
ジャンル外では築山桂と小川一水。
講談社ノベルスをこよなく愛す特ヲタ。

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