2014.08/26 [Tue]
高里椎奈『うちの執事が言うことには(2)』
![]() | うちの執事が言うことには (2) (角川文庫) 高里 椎奈 佐原 ミズ KADOKAWA/角川書店 2014-07-25 売り上げランキング : 19097 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
★★★☆☆
心の声です。それさえ見失わなければ、誰に何を言われてもビクともしません。
自分の行動を決められるのは自分だけ。旦那様の願いに従う事が、私が私である矜持なのです
自他共に認める世間知らずの花穎が烏丸家当主となって、ひと月が過ぎようとしていた。引退生活を満喫している様子の父・真一郎は屋敷を出たまま戻らず、先代執事の鳳に代わり花穎に仕える衣更月は、整った顔で黙々と職務をこなすばかりで取り付く島もない。そんなある日、訪れた紳士服店で他家の子息に関する不穏な噂を耳にした花穎は、真相の究明に乗り出すが……。発展途上の若き主従に新たなる試練が!?
「うちの執事が言うことには」第2作。
高里椎奈が手掛ける若き主と不本意ながら彼に仕える執事を描いた日常系ミステリの続刊です。
今巻も収録されているのはインターバルの挿話を含む全4篇。事件としては比較的ありがちで些か大事だった前巻に比べ、今作ではより“日常の謎”らしい方向へと舵を切っているのが大きな違い。ミステリ作家の矜持を感じさせるつくりと伏線の丁寧さはそのままに、話す人間によってまったく真逆の人物像が浮かんでくる他家の執事にまつわる秘密や犬小屋の落書きと暗号じみた遺書の意味、花穎を頼ってきた大学院時代の恩師など、バラエティに富んだ内容で楽しめます。
注目は赤目と壱葉を招いた晩餐会の練習中、突如響いた謎の破裂音の正体を探る「狼と七匹目の仔山羊」で、一般人の生活環境ではまず事件に成り得ない事象が謎を創出し、ありふれているからこそ意表を突いた解になる。これぞ上流階級ミステリの上流階級ミステリたる意義でしょう。設定がキャラクターのためだけに終始せず、ミステリ部分にちゃんと活かされているのも優秀です。
次巻は11月刊行とのことで大いに期待して待っておきたいところ。
ちなみに今巻、初回配本ぶんにのみ書き下ろしのショートストーリーペーパーが付属しています。購入を考えている方はお早めにどうぞ。
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