2014.07/31 [Thu]
高田崇史『神の時空 -鎌倉の地龍-』
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★★★☆☆
女子高生・辻曲摩季が、意識不明の状態となり由比ヶ浜で発見された。同じ頃、鎌倉幕府二代将軍・頼家と源氏一族の遺跡が荒らされ、鶴岡八幡宮の鳥居が倒壊する! 霊感が強い摩季の兄姉と友人の陽一は、二つの事件の背後に怨霊の影を感じ、鎌倉時代について調べ始める。すると、数多の謀殺と陰謀が渦巻く、闇の鎌倉殺戮史に気がつく。歴史に隠された、鎌倉将軍暗殺事件の真相とは……!?
「神の時空」第1作。
「QED」、「千葉千波」、「カンナ」とメインシリーズを続々完結させた高田崇史が満を持して始める新シリーズの1作目。歴史の謎と真実を炙り出す作風はそのままに、シャーマンの一族の末裔である辻曲家の兄妹が怨霊を目覚めさせ世に混乱をもたらさんとする黒幕の陰謀に巻き込まれる伝奇小説となっています。
タイトルどおり、議題となるのは高田作品でも過去幾度も舞台になっている古都鎌倉。辻曲兄妹の長女・彩音に頼まれた主人公の福来陽一が各種文献を当たる形で、源頼朝と北条家、鎌倉幕府にまつわる真実の姿を明らかにしていきます。
怨霊や妖怪が跋扈し伝奇小説の体裁をとってはいるものの、歴史史料に遺された不可解な記述や矛盾点を論い、合理的な着地点としての解決を探るスタンスはいつもの高田崇史で、最大の見せ場に謎解きをもってきていることからも、ジャンル的には歴史ミステリと述べて問題ないでしょう。
とはいえ怨霊と化した頼朝に対し“真実の頼朝像”が現代まで正しく語り継がれていることを伝え、その怒りを鎮めて貰うという展開上、作中にて揺るぎのない“絶対的正答”が掲げられることとなり、それによってどうしても答えありきの予定調和に思えてしまうのがウィークポイントで、正解のない論に可能性を見出す歴史ミステリの面白さが削がれてしまっているのもまた事実。
どう考えてもムリのある歴史講釈のぶち込み方といい、作品としてもう少し練るべき余地があるように感じました。あ、オビに描かれたコミカライズ版の奈々は可愛いです。
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