2014.07/17 [Thu]
円居挽『河原町ルヴォワール』
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★★★★★
京都・鴨川で龍樹家当主・落花が水死体で見つかり、死の謎を巡って私的裁判・双龍会が開かれる。落花の妹・龍樹撫子は、兄・大和を姉殺しの真犯人として告発、弁護役の元恋人・城坂論語と対決することに。一方、龍樹家の龍師・御堂達也と瓶賀流は、落花の死の謎を探るうち、京都一の権力者・黄昏卿と遺伝子研究の病院との関係を掴む。双龍会で暴きだされる真相とは――?
「ルヴォワール」シリーズ 第4作。
京の都に古くから根付く私的裁判文化、双龍会にて交わされる論戦で魅せるリーガルミステリ。
今回議題となるのはまさかの龍樹落花殺害事件。著者曰く一応のシリーズ最終作ということで、主要キャラクターの生死の真相を謎に据え、これまで描かれてきた登場人物たちの物語にもきっちりしっかり蹴りを付けます。
落花の命を奪った仕掛けは賀茂川と高野川どちらに施されたものなのか、またそれは大和と落花どちらが用意したものなのか――。命題自体は至ってシンプル、シリーズ最薄200ページ強の短さながら、新たな証拠が提出される毎に目まぐるしく構図が入れ替わり、別の可能性を示してみせる展開はまさに白熱そのもので、相も変わらず質が高い。議論されるべき問題がシンプルだからこそ、その凄さがより際立ちます。
また、一般に多重解決ものというと、ある事件に対して複数の推理が乱立される都合上、前の推理が次の推理にひっくり返され、結果としてひとつひとつの説得力を低下させてしまうという大きな問題を孕んでいますが、本作ではそこに“辻褄さえ合っていれば真実かどうかは二の次”な双龍会のシステムを組み込むことで、ふたつ以上の推理をどちらも否定せず並列的に“正解”にしてしまうウルトラCともいえる所業を成し遂げているのが驚きです。
しかもそれを実現させるために半ば超常じみた黄昏卿の存在をある種のフックとして活かした上で、シリーズ既刊で見てきたあれやこれやが布石となって読者の目の前で炸裂する超絶技巧。これはもう、褒める以外に何をしろと。
あまりの周到さ、あまりの巧さにもはや褒めないわけにはいかない、褒めざるを得ない、というレベルにまで達しています。「シリーズ最終章にして最高傑作!」の煽り文句に偽りなし。今年度本ミス、最有力候補でしょう。
ただし、あくまでシリーズを追っていること前提ですので、興味のある方は1作目の『丸太町ルヴォワール』からどうぞ。文庫化もされていて手に取りやすいと思います。
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