2014.06/23 [Mon]
小島正樹『硝子の探偵と銀の密室』
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★★★☆☆
ほんとうにあんた、あの時と同じ人物か。すっかり見せてもらったが、まるで別人だぜ
東京の多摩湖畔で、巨木の高枝に挟まったウエットスーツ姿の女性の死体が発見される。さらに同じ頃、現場から少し離れた住宅地で、女性社長が三重密室の邸宅内で殺害されていた。捜査本部を率いる警視庁の理事官、和久井遙香は同一犯であるとにらみ、被害者二人に共通する知人たちを聴取するが、全員にアリバイがあり、事件は迷宮入り。一方、本庁の刑事部長の密命を受けた刑事の友坂は、庁内で「ガラスの探偵」と囁かれる朝倉透に事件の解明を依頼するが!?
「硝子の探偵」第2作。
自信過剰な私立探偵、朝倉透が不可能犯罪を突き崩すシリーズの第2弾です。今回のテーマはタイトルどおりの密室殺人。雪の降った夜、ダイバースーツを着たまま樹上で見つかった刺殺体と、その近隣の豪邸内で発生した殴殺事件のふたつがメインの謎で、信じ難いことに犯行現場が樹の上であるらしい事実、合鍵はすべて施錠された家の中という異なる密室状況にそれぞれ降雪による足跡の問題が加わり、強固な不可能性が科せられています。
特に樹上の死体は、猟奇的でありつつもどこか間の抜けた奇妙なシチュエーションに、なぜそんな状況が出来上がってしまったのかを大いにそそらせます。小出しにされるヒントが多いため、難易度自体は決して高くはないものの、両密室が一本の線となってひとつの事件を形作る様は、ミステリの解決編として実に綺麗です。
一方で、それらの事件が解決したところから本作は第二ステージとも呼べる展開に突入し、問題の焦点が密室の謎解きから真犯人との対決に移行します。この終盤戦がかなりしょっぱい。人質を取った犯人が叩きつけてくる挑戦状が、仮にも人ひとりの命を懸けるにはしょうもなさすぎる単なる「なぞなぞ(作中でもそう表現されています)」に過ぎず、小学生が遊びで出し合うような代物なのです。
しかも、そんなくだらない問題を出しておきながら、自分のことを抜け抜けとサイコパスだの何だのと宣っているから性質が悪い。これを作者も登場人物も素でやっているものだから、読んでいる側としては失笑を軽く通り越し、恥ずかしささえ覚えるレベルです。トリックにおける合理性を、犯人の個人的趣向に委ねって投げてしまっている点も褒められません。
クライマックス手前までは良かったのに、どうしてこうなったし。中盤までの貯金をすべて台無しにして余りある程度には酷かったです。
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