2014.06/15 [Sun]
小島正樹『硝子の探偵と消えた白バイ』
![]() | 硝子の探偵と消えた白バイ (講談社ノベルス) 小島 正樹 講談社 2013-07-04 売り上げランキング : 34779 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
★★★☆☆
警視庁の管理官・幸田が乗る自動車を先導していた白バイが、乗務する警官とともに消失。ありえない事件を穏便に解決すべく、幸田は庁内で「ガラスの探偵」と囁かれる探偵・朝倉に謎の解明を依頼する。朝倉は、繊細な心と明晰な頭脳を併せ持つ「名探偵」だと自任しているが、推理は助手の小太郎に任せきっている。現場調査の最中にビルの屋上で発見された白バイ警官の射殺体。そして、かつて同じ場所で起こったストーカー殺人事件が、朝倉を迷宮へと誘う――。
「硝子の探偵」シリーズ 第1作。
眉目秀麗で自信過剰、警視庁内で“ガラスの探偵”と噂され、上層部からの信頼も篤い残念系イケメンのへっぽこ私立探偵が、切れ者の助手と共に白バイ消失と不可思議な銃撃事件の謎に挑むミステリ。昨年の刊行直後に購入して絶賛積読中だったものをシリーズの新刊発売を機に崩しました。
本作で主題となるのは大まかに、袋小路の行き止まりから姿を消した白バイが如何にしてビルの屋上へと移動したのか、また白バイ運転手の射殺犯はどこへ消えたのか。そして、そこから連なる警官襲撃事件での奇妙な弾道にはどういう意味があったのかです。
自称名探偵でありながら的外れな推理を連発する朝倉を前に、彼を尊敬してやまない助手の小太郎がそれとなく導く形でフォローを入れるので、読者にとってもヒントがより明確化され、より近しい次元での謎解きが可能となります。しかしながらフェアプレイに徹しているかというと微妙なところで、狙撃事件の射入口の謎に関してはアンフェアとは言わないまでも、悪い意味で読者を煙に巻こうとする作者の小狡さが見え隠れしているも事実です。しかも勘の良い読者についてはむしろ、その描写の不自然さが少なからず違和感を抱かせる要因となっているフシがあり、完全に逆効果で墓穴を掘っているのが悪印象。
白バイ消失の真相も至極現実的な着地点であるため、アクロバティックな驚きはほぼ皆無です。そうかと思えば、大ネタの物理トリックはそれほど珍しい類のものでもないし……。
キャラクターに魅力があり、190ページという頁数を考えれば充分楽しめますが、そのぶん良くも悪くもコンパクトに収まっています。いや、好きですけれど。
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