2009.10/20 [Tue]
山口芳宏『妖精島の殺人(下)』
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★★★☆☆
……君の言いたいことはわかった。
街が消失し、妖精界が出現するという噂の「竹原島」。真相を探る学生の森崎と菜子、そして謎の招待状によって集められた富豪の郷原一族は、島の「妖精城」を訪れた。だが直後に悪夢は始まる!!墜落死、毒殺、銃殺……異形の城で起きる連続殺人。彼らは殺人鬼の魔手から生き延びることができるのか? そして街の消失と妖精界出現は真実なのか? 学生探偵・真野原が島の秘密を暴く!!
『~島の殺人』シリーズ 第1作の下巻。
事件が起きるまでの上巻の期待感に比べると、どうしても尻すぼみな感が否めないです(つまらないという意味ではないです)
トリックなんかも「ふぅん、そう」みたいな感じで。そこまで奇抜かといわれれば、そうでもないんですよね。
――しかも、
なんか難しい計算式でてきた!!
(以下ネタバレ)
いや、よくよく考えてみれば中学生の計算問題なんですけど、そんなものから離れて久しい自分には難しかったです。ていうか、こんな計算式本当に解いている人なんて殆ど皆無に近いでしょ、実際。誰がミステリ読みながら片手に鉛筆持って正方形の対角線の長さを求めるんだ、と小一時間(ry
まほろさんが理詰めで論理的思考を測る適正試験(?)だとしたら、こちらは高校受験の数学の文章題。でもってそんな具合で結局のところ計算が主だから、謎が解かれたときのすっきりさというか爽快感というのがイマイチ得られにくかったです。
肝心の城移動のトリックまではわからなくとも、どうせ妖精界が同じ島の別の場所にあるだろうというあたりまでは容易に想像できるのもネック。
あと問題は真野原です。いくらなんでも真犯人自殺の黙認と、黒幕を攻め立ててのあの行為は、『相棒』の右京さんの持つ危うさをよりエスカレートさせたようなレベルで、はっきり言ってかなり非道い。真野原自身、ああなることが予測できなかったはずもない――というより、容易に予測できていたハズなんですよ。それでいて、そこらへんの経緯を飲み会で悦に入って話すというのがまた非道い。人の命<謎解きの演出 という考え方を持っているのは極めて古典ミステリの探偵っぽくて、つまりは所詮自己満足なわけですよ。
この思想はちょっと許容できない。探偵である以上、たとえ相手がどんなに卑劣なであっても、最後まで“命”は大切にしなくちゃいけないと思うんです。それをあまつさえ、自殺幇助に極めて近いやり方とか、非道すぎる。真野原キライ。
ストーリーは面白かったので、次作も読みますが、このままの真野原だとちょっときついかも。
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