積読本は積読け!!

300冊の積読本もなんのその、本や映画の感想などをつらつらと述べてみたり。

Entries

中町信『模倣の殺意』

模倣の殺意 (創元推理文庫)模倣の殺意 (創元推理文庫)
中町 信

東京創元社 2004-08-13
売り上げランキング : 167383

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

★★★☆☆
『七月七日午後七時の死』
一字画もおろそかにしない、堅苦しいまでの楷書文字。
まぎれもなく坂井正夫の筆跡である。
坂井は死を覚悟して、この原稿を書き綴ったのであろうか。

七月七日の午後七時、新進作家、坂井正夫が青酸カリによる服毒死を遂げた。遺書はなかったが、世を儚んでの自殺として処理された。坂井に編集雑務を頼んでいた医学書系の出版社に勤める中田秋子は、彼の部屋で偶然行きあわせた遠賀野律子の存在が気になり、独自に調査を始める。一方、ルポライターの津久見伸助は、同人誌仲間だった坂井の死を記事にするよう雑誌社から依頼され、調べを進める内に、坂井がようやくの思いで発表にこぎつけた受賞後第一作が、さる有名作家の短編の盗作である疑惑が持ち上がり、坂井と確執のあった編集者、柳沢邦夫を追及していく。


 坂井正夫なる男が七月七日午後七時に命を落とした事件に際し、ふたりの関係者がそれぞれ別の方向からその死の謎と、容疑者と目されるこれまた異なるふたりの人物のアリバイ崩しに挑むミステリ。
 本書は知人の父親というちょっと変わった筋からオススメ頂いた作品でして(ちなみに直接の面識はありません)、何でもその昔読んで大層驚かされたとのことで手に取りました。どうやら巷では「40年前の傑作が今、再びの大ブレイク!」との売り文句で版を重ねているらしく、いわゆる発掘本として再注目されているようです。

 それ故に、ことミステリとして勝負した場合、どうしても時代性がネックになっているのは否めません。発表年代を考えれば仕方のないこととはいえ、アリバイ崩しはひと昔もふた昔も前に使い古されたようなネタであり、現代ミステリに馴れ親しんだ身にはいまさら感が漂うし、当時は革新的とされた中核を担うトリックも、もはやありふれすぎた手法です。
 この構造でふたつの物語を最終的にひとつに収斂させる手腕は見事ではありますが、ミステリ史上の意義は別にして、既にある程度の想定問答集が出来つつある昨今、目次と構成に目を通しただけで条件反射的に使われているネタを看破できてしまうこの時代に、改めてその価値を問い、読者に直球で挑むだけのパワーを備えているかというと、残念ながらそうとは言えないでしょう。

 何より、売り方が悪い。良い加減、オビの煽りや背表紙の紹介文で真相を仄めかす手法をやめろと言っているだろうに。いくら売れるからといっても、これがあるだけで読書の興が80パーセントは削がれます。
 けれど一連のブームがあったからこその復刊と再評価であることを考えると、一概に無下にはできないものがあり、そう考えると良し悪しです。


スポンサーサイト

Comment

Comment_form

管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

ご案内

プロフィール

はろーすみす

Author:はろーすみす
シリーズものも平気で数年寝かせる積読家。本格ミステリとスター・ウォーズ小説を中心に読み漁り、新刊・話題作はあまり追っていません。

好きなミステリ作家は古野まほろ、はやみねかおる、西尾維新、霧舎巧。
ジャンル外では築山桂と小川一水。
講談社ノベルスをこよなく愛す特ヲタ。

当ブログはリンクフリーです。
お気軽にどうぞ。

カレンダー

10 | 2017/11 | 12
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 - -

ただいまの積読本

現在:456冊                        目指すは未踏の500冊! 最新の15冊を表示。                 冊数をクリックするとすべての積読本を見られます。

ブログ内検索

作家別作品アーカイブ

過去の読書記録はこちらから。 作家名が五十音順に、それぞれシリーズごとに見られます。

評価について

★☆☆☆☆ 破り捨てたい衝動に ★★☆☆☆ うーん。これはびみょ(ry       ★★★☆☆ 普通に面白いです ★★★★☆ 一読の価値アリ ★★★★★ 殿堂入り                ★×4以上は自信を持ってオススメ  ★×5はとりあえず読んでほしい傑作

2014年のベスト5

2014年に読んだ小説の       (暫定)ベスト5はこれ!!

2012年のベスト5

2012年に読んだ小説の        ベスト5はこれ!!

2011年のベスト5

2011年に読んだ小説の          ベスト5はこれ!!

1.トリプルプレイ助悪郎(2007年刊)   2.名探偵に薔薇を(1998年刊)             3.化物語(2006年刊)          4.時砂の王(2007年刊)                  5.天帝の愛でたまう孤島(2007年)

最近の記事

月別アーカイブ

ブロとも申請フォーム

アソシエイト

アクセス解析