2014.02/28 [Fri]
伏見つかさ『十年目の約束』
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★★★★☆
伏見つかさ渾身の、感動新作エピソードを短編小説冊子として同梱!
意味深で気になるタイトルの真相とは?
「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」最終作。
テレビアニメ『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』の第2期『俺の妹がこんなに可愛いわけがない。』Bru-ray/DVD第1巻の完全生産限定版特典となる本編のアフターエピソードです。
本編が最終巻で壮絶にやらかした挙句、10年後のお話をBru-ray特典用に書き下ろしというお行儀が悪すぎる限定版商法に、さすがにそこまでは付き合い切れないわと思っていたところ、某ヤフオクで小冊子だけが安価に出品されていたので誘惑に負けて落札しました。
あらかじめ予告されていたとおり、本作は本編完結の10年後のお話となるのですが、番外編だけあって語り部は京介ではなく、高校生になった珠希ちゃん。そこからさらに、10年前の一幕を回想する形式でかつての桐乃と珠希ちゃんのとあるやりとりが綴られます。
京介が結局誰とくっついたのか、はたまた誰も選ばなかったのか。桐乃と珠希ちゃん以外のメンツは現在何をしているのかは一切語られず、その向きを期待した人にとっては些か肩すかしであるやもしれないものの、本編をオープンエンドで終わらせたからにはこれが正しい姿勢でしょう。その後の出来事を事細かく描くのなら、それこそ最終巻でやってしまえば良いのです。
では、ここでは何が語られているのかというと、『メルル』の最終回を迎え、お気に入りのアニメとお別れしなくてはななくなった珠希ちゃんに対する、桐乃なりの諭しなんですね。この世の中に最終回のこない作品なんて存在しないし、どんなに素敵で思い入れのある作品だって、いつかは完結してしまう。
そんなとき、自分たちはどうやってその“終わり”を受け止め、受け入れるべきなのか。桐乃なりの論で、幼い珠希ちゃんに伝えるわけです。
『メルル』の続きがないと知った珠希ちゃんの心情は、『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』の物語をこれ以上読むことができずに嘆くわれわれの喪失感に重ねられ、またそんな「俺妹」ファンに対する作者からのメッセージにもなっている。「俺妹」というシリーズがそもそも、オタク文化を一種メタ的に取り込んできた作品であった事実を鑑みると、これはなかなか感慨深く、〆め方としても上手い落としどころです。正直な話、ちょっと感動してしまいましたよ。
キャラクター至上主義な視点からは物足りないと感じる方もいるでしょう。しかし、私はこの短編を読めて良かったと心から思います。「俺妹」に出逢えたことに感謝し、その気持ちをそっと心の中に閉まっておきたくなる。そんな素敵なエピローグでした。
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