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映画『ゼロ・グラビティ』

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★★★★☆
地表から600kmの上空。すべてが完璧な世界で、誰もが予想しなかった突発事故が発生。スペースシャトルの大破によって、船外でミッション遂行中のメディカル・エンジニアのライアン・ストーン博士と、ベテラン宇宙飛行士マット・コワルスキーの2人が無重力空間に放り出されてしまう。漆黒の宇宙で2人を繋ぐのはたった1本のロープのみ。残された酸素はわずか2時間分。地球との通信手段も断たれた絶望的な状況の下、果たして2人は無事に生還できるのか……? (2013年 アメリカ)


 先月の話になりますが、昨年話題となった映画『ゼロ・グラビティ』を観てきました。
 このブログでも何度か書いているように、私は『アバター』で初の3D体験をして以来、現状で3D映画は飛び出す絵本以上のものを見せることはできないと確信したこともあり、今回も当然の如く2D版で鑑賞しました――が、これはちょっとしくじったかもしれません。この映像は是非とも3Dで観たかった!
 さすがは無重力状態での演者の動きを再現するために装置を新たに作っただけのことはあります。それほどまでの臨場感と浮揚感、そして恐怖感。頼れるものも何もなく、空気抵抗もないので一度勢いがついてしまったら慣性の法則によって延々と真空を漂い、周り続ける。とにかく、小さなゴミクズひとつ、わずかの火の粉でも怖ろしく、移動することそれ自体に壮絶な緊張を伴う。宇宙遊泳について回る恐怖が丹念に、そしてこれでもかというほど念に入って描かれている作品です。

 個人的に最も感心したのは、冒頭でまるで地球を見上げているかのようなアングルで人が映されているところです。宇宙空間には上下左右の概念は存在しないに等しいというのは重々承知していたとはいえ、人類視点ではあくまでも空を目指して宇宙に到達するため、従来の映像作品ではその殆どが地球は自分の足下にあるものとして描かれていましたからね。
 地球の美しさもさることながら、この映像だけでも新鮮さが滲み出ていて惹き込まれました。

 そんな何もない宇宙空間の中、事故で仲間を失い、通信手段もなくただひとり地球への帰還を目指すのが本作の主人公、ライアンです。過去に子供を失った経験から、どこか厭世的で生きることに価値を見出してこなかった彼女が極限状態において、仲間の死と無限に広がる闇と対峙することで、いま生きていることの偉大さを改めて実感し、何としてでも再び故郷の土を踏もうと奮闘する。
 言ってしまえば本当にそれだけのお話なのですが、宇宙服を隔ててすぐ外が無であり、酸素を吸うこともままならない極限状況の恐怖感を観客側にもダイレクトに伝えてくる映像のおかげで、作中の主人公以上に自分自身にとってもそれが現実味を伴って感じられるのです。
 特に中盤のステーション火災の描写は大迫力で、これこそまさしく3D映えしたんだろうなぁ、と観ている時点で既に後悔していました。

 そして何より、原題に込められた意味が素晴らしい。邦題こそ『ゼロ・グラビティ』ですが、本作はもともと『GRAVITY』というタイトルなのです。「無重力」と「重力」――まったく真逆の意味合いで、宇宙ものなだけにあらすじだけ聞くと確かに、日本語タイトルの方がしっくりきます。しかし、観終えてみるとこれは『ゼロ・グラビティ』ではなく、紛れもなく『GRAVITY』だったと思うでしょう。
 母なる大地に息づく生命の音、水や木々、酸素に溢れた世界。無重力空間に長く滞在する宇宙飛行士は相当に筋力が落ちてしまいます。地球の重力に負けて立ち上がることもできない彼女が、その手に土を握りしめ、泥にまみれて自らの身体をもってして地球を体感するラストを見ると、『GRAVITY』以上に相応しいタイトルは考えられません。


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はろーすみす

Author:はろーすみす
シリーズものも平気で数年寝かせる積読家。本格ミステリとスター・ウォーズ小説を中心に読み漁り、新刊・話題作はあまり追っていません。

好きなミステリ作家は古野まほろ、はやみねかおる、西尾維新、霧舎巧。
ジャンル外では築山桂と小川一水。
講談社ノベルスをこよなく愛す特ヲタ。

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