2014.01/31 [Fri]
中村あき『ロジック・ロック・フェスティバル ~Logic Lock Festival~ 探偵殺しのパラドックス』
![]() | ロジック・ロック・フェスティバル ~Logic Lock Festival~ 探偵殺しのパラドックス (星海社FICTIONS) 中村 あき CLAMP 講談社 2013-11-15 売り上げランキング : 385669 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
★★★☆☆
藩校を前身とする名門高校・鷹松学園の新入生、「僕」こと“中村あき”。とある“名探偵”の代役として暗躍した過去を持つ彼とその仲間たち――山手線太郎・万亀千鶴・鋸りり子――は完全無欠の生徒会長・衿井雪から来たる文化祭の『実行補佐』を命ぜられ、学園の事件を解決へと導いていたのだが……!?
星海社FICTIONS新人賞受賞作。
昨年、発売されるや古野まほろ『天帝のはしたなき果実』との類似点が複数挙げられ、星海社側が事実無根と声明発表、まほろ自身もTwitterで言及し一時は盗作騒動でヒートアップした話題作です。騒動そのもは2013年内に沈静化され、なんとなく取り上げる機を逃した感もありますが、実は密かに去年のうちに読み終えていました。
スタイルとしては文化祭に向けた実行補佐に任命された中村あきらが、委員の仕事の中でぶつかった謎を解く学園ミステリであるものの、準備期間の前半2章においては暗号メールの解読と部室写真消失事件という日常の謎、学園祭当日の後半戦になるとメインの事件が密室殺人へとシフトしていく構成が独特です。
ミステリの質ではロジックの釣瓶打ちで読者を圧倒するまほろ作品には到底及ばないながら、21世紀にもなってこの真相か、と思わず呆れてしまうようなありきたりなネタを、推理の過程で敢えて一度場合分けし、そこからひっくり返しを行うことで逆に驚きに繋げてくる第一章など、その魅せ方は決して悪くはありません。
中核に当たる学園祭の事件にしても、密室状況を可能にせしめた“見えない人”テーマが学園ミステリというジャンルと不可分なものとなっていて、尚且つそれが犯人の心情により大きな説得力を持たせている。このシチェーションが成立してしまう事実それ自体が既に衝撃であり、容赦なく読者に叩きつけてくる解決編は、その悪意の大きさに背筋が寒くなるほどでした。
それだけに、いや、だからこそ、あまりにも他人の作品を間借りしすぎていることがつくづく悔やまれます。ところどこに見られる文体のクセや学校の設定、解決編前のやりとり、新訳『果実』の最後の一文と読点の位置まで対を成すラストの一行――。作中に登場するバスケ部員の名前がすべてメフィスト賞作家なことからも、本作が古野まほろの影響を大いに受けていることはもはや否定のしようがありません。
盗作かどうかの観点でいえば、盗作ではないでしょう。たぶんこれは、物書き初心者が陥りがちな「自分の好きな要素を詰め込みまくったら、既存の作品のトレースになってしまったパターン」の典型だと思います。
けれど、商業小説としてここまで似せていたら元作者に何か言われても仕方がないし、発売前に許可を取らずにこれを出してしまったのは、些か配慮が足りなかったと言わざるを得ないのも確かです。
ミステリ小説を書けるだけの地力は感じるので、次回は借り物のアイディアなんかではなく、100%オリジナルの一から百まで自分で生み出した作品で勝負してほしいものです。そのときは間違いなく、心から応援させて貰います。
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