2014.01/15 [Wed]
相沢沙呼『マツリカ・マハリタ』
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★★★☆☆
柴山祐希、高校二年生。彼には、人に言えない秘密がある。実は、学校の近くにある廃墟ビルに住み、望遠鏡で学校を観察している美少女・マツリカさんに命じられて、学校の怪談を調べていた。新学期を迎え、なかなかクラスになじめない柴山の下に、『一年生のりかこさん』の怪談話が舞い込んでくる。一年生の時に自殺をした彼女は、学校に未練を残していて、ときどき霊になって現れるらしい。その真実を突き止めるため、捜査を開始した柴山だったが、調べていくうちに……!?
「マツリカ」シリーズ 第2作。
一月も半ばも過ぎようとしてるのに、未だに昨年読了分のレビューが片付いていない罠。
妄想過多で人付き合いの苦手な男子高校生が、廃ビルに住まう魔女めいた美少女に虐げられながら学校の怪談の調査を命令されるドM系学園ミステリです。
前作『マツリカ・マジョルカ』は後半持ち直したとはいえ、ミステリ的にはあまりにもお粗末で壁本ギリギリのクオリティだったのに対し、今作はしっかり読み応えのある日常の謎ものとなっています。これはむしろ、好みの部類といっても良いくらい。
本作では各章ごとの事件にプラスして、『一年生のりかこさん』とマツリカさんとの関連性が全体にまつわる謎として設定されており、妖艶な名探偵の秘密にもひとつの答えが出されます。また、前作にて柴山がマツリカの足となっていくつかの事件の解決に関わったこと、学年がひとつ上がったことにより新たな人間関係が生まれたこともあって、作品を通してマツリカの影はかなり薄く、柴山は柴山で探偵役のマツリカに頼り切ることなく自力で謎の解明を行うパターンが増えてきます。
というのも、このシリーズにおけるマツリカの立ち位置は、単に探偵役であるだけでなく、学校というコミュニティの中に上手に溶け込むことのできない語り部の「逃避」の象徴でもあるのです。それ故に、柴山が新たな一歩を踏み出すためにはマツリカからの「卒業」が必須であり、そうしてみると本作でマツリカの存在感があまりないのも必然の流れといえるでしょう。
一方で、これまで救われる立場にあった柴山が傷を抱えて生きてきたマツリカを救ってみせる最終章は彼の成長を感じられると共に、ミステリアスでサディスティックな殻を脱いだ等身大の彼女に初めて触れられるようで、物語としても非常に綺麗で美しい、まとまったものとなっていました。
これから読もうと考えている方には前作と本作とで実質、上下巻扱いと捉えて頂いても良いかもしれません。この結末が好きだからこそ敢えて、これ以上の続編は出さないでほしいです。
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