fc2ブログ

積読本は積読け!!

300冊の積読本もなんのその、本や映画の感想などをつらつらと述べてみたり。

Entries

相沢沙呼『マツリカ・マハリタ』

マツリカ・マハリタ (単行本)マツリカ・マハリタ (単行本)
相沢 沙呼

角川書店 2013-08-31
売り上げランキング : 73507

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

★★★☆☆
柴山祐希、高校二年生。彼には、人に言えない秘密がある。実は、学校の近くにある廃墟ビルに住み、望遠鏡で学校を観察している美少女・マツリカさんに命じられて、学校の怪談を調べていた。新学期を迎え、なかなかクラスになじめない柴山の下に、『一年生のりかこさん』の怪談話が舞い込んでくる。一年生の時に自殺をした彼女は、学校に未練を残していて、ときどき霊になって現れるらしい。その真実を突き止めるため、捜査を開始した柴山だったが、調べていくうちに……!?


「マツリカ」シリーズ 第2作。
 一月も半ばも過ぎようとしてるのに、未だに昨年読了分のレビューが片付いていない罠。
 妄想過多で人付き合いの苦手な男子高校生が、廃ビルに住まう魔女めいた美少女に虐げられながら学校の怪談の調査を命令されるドM系学園ミステリです。
 前作『マツリカ・マジョルカ』は後半持ち直したとはいえ、ミステリ的にはあまりにもお粗末で壁本ギリギリのクオリティだったのに対し、今作はしっかり読み応えのある日常の謎ものとなっています。これはむしろ、好みの部類といっても良いくらい。

 本作では各章ごとの事件にプラスして、『一年生のりかこさん』とマツリカさんとの関連性が全体にまつわる謎として設定されており、妖艶な名探偵の秘密にもひとつの答えが出されます。また、前作にて柴山がマツリカの足となっていくつかの事件の解決に関わったこと、学年がひとつ上がったことにより新たな人間関係が生まれたこともあって、作品を通してマツリカの影はかなり薄く、柴山は柴山で探偵役のマツリカに頼り切ることなく自力で謎の解明を行うパターンが増えてきます。
 というのも、このシリーズにおけるマツリカの立ち位置は、単に探偵役であるだけでなく、学校というコミュニティの中に上手に溶け込むことのできない語り部の「逃避」の象徴でもあるのです。それ故に、柴山が新たな一歩を踏み出すためにはマツリカからの「卒業」が必須であり、そうしてみると本作でマツリカの存在感があまりないのも必然の流れといえるでしょう。

 一方で、これまで救われる立場にあった柴山が傷を抱えて生きてきたマツリカを救ってみせる最終章は彼の成長を感じられると共に、ミステリアスでサディスティックな殻を脱いだ等身大の彼女に初めて触れられるようで、物語としても非常に綺麗で美しい、まとまったものとなっていました。
 これから読もうと考えている方には前作と本作とで実質、上下巻扱いと捉えて頂いても良いかもしれません。この結末が好きだからこそ敢えて、これ以上の続編は出さないでほしいです。


スポンサーサイト



Comment

Comment_form

管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

ご案内

プロフィール

はろーすみす

Author:はろーすみす
シリーズものも平気で数年寝かせる積読家。本格ミステリとスター・ウォーズ小説を中心に読み漁り、新刊・話題作はあまり追っていません。

好きなミステリ作家は古野まほろ、はやみねかおる、西尾維新、霧舎巧。
ジャンル外では築山桂と小川一水。
講談社ノベルスをこよなく愛す特ヲタ。

当ブログはリンクフリーです。
お気軽にどうぞ。

カレンダー

02 | 2023/03 | 04
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31 -

ただいまの積読本

現在:456冊                        目指すは未踏の500冊! 最新の15冊を表示。                 冊数をクリックするとすべての積読本を見られます。

ブログ内検索

作家別作品アーカイブ

過去の読書記録はこちらから。 作家名が五十音順に、それぞれシリーズごとに見られます。

評価について

★☆☆☆☆ 破り捨てたい衝動に ★★☆☆☆ うーん。これはびみょ(ry       ★★★☆☆ 普通に面白いです ★★★★☆ 一読の価値アリ ★★★★★ 殿堂入り                ★×4以上は自信を持ってオススメ  ★×5はとりあえず読んでほしい傑作

2014年のベスト5

2014年に読んだ小説の       (暫定)ベスト5はこれ!!

2012年のベスト5

2012年に読んだ小説の        ベスト5はこれ!!

2011年のベスト5

2011年に読んだ小説の          ベスト5はこれ!!

1.トリプルプレイ助悪郎(2007年刊)   2.名探偵に薔薇を(1998年刊)             3.化物語(2006年刊)          4.時砂の王(2007年刊)                  5.天帝の愛でたまう孤島(2007年)

最近の記事

月別アーカイブ

ブロとも申請フォーム

アソシエイト

アクセス解析