2013.12/20 [Fri]
青崎有吾『水族館の殺人』
![]() | 水族館の殺人 青崎 有吾 東京創元社 2013-08-10 売り上げランキング : 91139 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
★★★★☆
夏休みも中盤に突入し、風ヶ丘高校新聞部の面々は、「風ヶ丘タイムズ」の取材で市内の穴場水族館に繰り出した。館内を館長の案内で取材していると、サメの巨大水槽の前で、驚愕のシーンを目撃。な、なんとサメが飼育員に喰いついている! 駆けつけた神奈川県警の仙堂と袴田が関係者に事情聴取していくと、すべての容疑者に強固なアリバイが……。仙堂と袴田は、仕方なく柚乃へと連絡を取った。あのアニメオタクの駄目人間・裏染天馬を呼び出してもらうために。
「裏染天馬」シリーズ 第2作。
『2014 本格ミステリ・ベスト10』堂々の第2位を獲得した学園(ちょっと出張型)ミステリ。読んだの自体は随分前なのに、いまさらながらの感想です。
前作の体育館に続いて今回舞台になるのは水族館。新聞部が取材で訪れた先で殺人事件が発生し、学校住まいのダメ人間・裏染天馬に話が行く形で探偵が事件解決に噛んでいきます。作品冒頭で人が死に、学校という閉鎖された環境でひたすらロジックを捏ね繰り回す都合上、どうしても地味にならざるを得なかった前作の反省を踏まえてか、今作では初っ端から大型水槽に転落した飼育員がサメに食い殺されるというキャッチーさ。掴みのインパクト、派手派手しさもばっちりで、読者に対して「魅力的な謎」を提供することに成功しています。
被害者がサメ水槽へ落ちるに至った経緯は早々に特定され、それをフックに現場調査から各人のアリバイ確認、犯行状況の再現へと持っていく手際もお見事です。メインにして最大の目玉である消去法推理に関しても、ただ単に犯行不可能な人間を振るい落としていくだけでなく、現場に残されたバケツや血の痕から“そこにあったハズの証拠品”までをも複数種類想定し、いけるところまで進んでは矛盾があったら引き返し、三度、四度と行きつ戻りつ確かな論理を積み重ねて絶対の真実を導き出す執拗さには舌を巻きました。推理パートの密度と物量、読み終えた後の充足感と満足度合はそこらのミステリの比ではありません。
とにもかくにも、圧倒的なまでのロジックに思わず呑まれてしまいそうなほどでした。
前作では恥ずかしくなるようなミーハーチョイスだったアニメネタも、今回は『七つの海のティコ』や『神無月の巫女』など、マニアックなところを突いていて良し。そして何故か推される『サラダ記念日』。作者は俵万智のファンなのかしら。
元副会長の扱いは本当にアレで良いのかと戸惑わなくもない。いや、笑えるっちゃ笑えるのですが。
スポンサーサイト
Comment
Comment_form