2013.11/22 [Fri]
石崎幸二『皇帝の新しい服』
![]() | 皇帝の新しい服 (講談社ノベルス) 石崎 幸二 講談社 2012-12-06 売り上げランキング : 88764 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
★★★☆☆
石崎さんだっていつまでも、
ミステリィ小説読んで、『結局叙述トリックかよ』とか不貞腐れていられないでしょ
瀬戸内海の島に代々伝わる、名門美蔵家・婿取りの儀式。櫻藍女子学院高校ミステリィ研究会・お騒がせトリオのミリア、ユリ、仁美は美味しい海の幸に目がくらんで、サラリーマン兼ミス研特別顧問の石崎を花婿候補に仕立てて島へ向かうことに。だがその儀式では過去数回にわたり殺人事件が発生し、いまだに真犯人が捕まっていない。さらに、石崎のもとにまで差出人不明の脅迫状が届く! 惨劇は繰り返されてしまうのか。
「ミリア&ユリ」シリーズ 第9作。
ふう。昨年末からシリーズを読み始め、なんとか期間内にランキング対象となる最新作まで追いつくことができました(本当は既に、今月刊行の『鏡の城の美女』も読み終えているのですが、まずは2014年度版『本ミス』対象作を優先して取り上げていこうと思うので、レビューはひとまずお預けです)。
それにしても、このシリーズは本当に面白い。女子高生三人組と石崎さんの掛け合いは笑えるし、先進的な化学ネタと古典的な探偵小説のスタイルの組み合わせは、他の作家には類を見ない独自性があります。昨今のキャラミス、ユーモアミステリ、理系ミステリブームの流れに乗って、初期作の文庫化やあわよくばアニメ化まで持っていけないんだろうか。この可愛すぎるミリアのイラストを見ると、真面目にそんなことを考えてしまいます。
今回の舞台は代々、島の巫女を輩出する家で行われる婿取りの儀式。古い因習の残る島に女系の一族、代々伝わる儀式と繰り返される惨劇、石崎さんの元へ届けられる怪しげな脅迫状――と、これまで以上にそれらしいガジェットが目白押しながら、相変わらず島に向かうのは半分を過ぎた頃からという孤島感のなさが笑えます。
三津田信三『凶鳥の如き忌むもの』とやっていることはそう変わらないのに、この違いはどこから生まれてくるのだろうか……。いや、そこが良いんですけど。
犯行動機に隠された驚くべきミッシングリンクと、乗っ取りによって一気に構図が逆転してしまう展開、タイトルに隠された真の意味など、単体のミステリ的に見ても申し分なし。水準としても充分以上なのですが、シリーズを通して眺めた場合、なんとなく『記録の中の殺人』とネタが被っているような気がしないでもないのが弱点といえば弱点。案外、この巻からふらっと読んでみた人の方がハマれるかもしれません。
ところで。今回、仁美が始終不機嫌だったのは、自分が持ってきた話とはいえ石崎さんがお見合いを受けたことにあると思うのですが、実際のところはどうなんでしょう? ミリア→石崎ラインと仁美→石崎ラインは鉄板だと思うんだよなぁ。
スポンサーサイト
Comment
Comment_form