2013.11/19 [Tue]
瀬名織江『哲学探偵ベルクソンの事件簿』
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★★★☆☆
ただし、最も肝心なのは、新たな考え方ができるようになった気がするという、その経験です。
おそらくは、その喜びだけでも、エラン・ヴィタール(生命の躍動)を体験していることになるでしょう
舞台は20世紀初頭のパリ……。次々に起こる殺人事件に、フランスが誇る天才哲学者、ベルクソンが挑む。最初に読者に犯人を示す構成。ベルクソンは自らの哲学思想でどのように犯人を追いつめるのか? ベルクソンが挑む6つの殺人事件の真相とは?
フランスの哲学者、アンリ・ベルクソンを探偵役にしたミステリ。といってもいわゆる歴史ミステリの類ではなく、「ミステリ小説を読むだけでベルクソンの哲学がわかる!」と銘打たれた『もしドラ』の系統に属する作品です。
収録作は全6篇。一般にはあまり浸透していない難解と思われがちな哲学思想を噛み砕き、小説を通して幅広い層に「なんとなくわかって」貰うという面では一定の成功を収めており、登場人物たちの会話やそれぞれの事件になぞらえて実際の著作から引用されるベルクソンの言葉は、取り立てて哲学への造詣が深くなくともすんなりと入ってきます。
謎解き部分も特段、瑕疵があったりするわけではないけれど、教科書的というよりは倒叙モノの作例集からそのまま抜き出してきたようなアリバイ崩しばかりなので、本格ミステリとしてわざわざ手に取るほどの訴求力を備えているかといえば、残念ながら否でしょう。ベルクソンの哲学講義が構造的にミステリ要素に組み込まれ、トリックへ寄与してくるとまた違ってきたのですが、元々そうした観点から作られている小説ではないので、その点を批判するのはお門違いです。
あくまでも哲学入門の読み物として、学校の授業等の導入に用いるにはもってこいの本だと思います。シモーヌも可愛いですし(オイッ
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