2013.11/14 [Thu]
北山猛邦『ダンガンロンパ霧切(1)』
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★★★★☆
かっこいいよ。君は生まれながらの探偵なんだ。
でもいつか……君もわたしと同じように、その理由に悩むかもしれないね。
その時はどうか、清らかな君のままでいて。それだけは君に云っておきたい
謎の依頼を受け集結した五人の探偵たちを待ち受けていたのは「犯罪被害者救済委員会」が企む『黒の挑戦』を通じた連続探偵殺人事件の幕開けだった……! 原作ゲーム『ダンガンロンパ』のシナリオライター・小高和剛からの直々の指名を受け、「物理の北山」こと本格ミステリーの旗手・北山猛邦が描く超高校級の霧切響子の過去――。
「ダンガンロンパ霧切」第1作。
今年度、4作目となる北山猛邦の新作はゲーム『ダンガンロンパ』のアニメ化に伴って刊行された、中学時代の霧切響子の活躍を描いたノベライズシリーズの第1弾。ゲームは未プレイではあるものの、予習として本作を読む前にアニメ版を全話視聴しました。
とはいえ作品自体は原作の知識がなくても問題のない独立した内容であるため、『ダンガンロンパ』をまったく知らない人でも安心して楽しめる本格ミステリとなっています。
山奥の展望台に集められた5人の探偵。目が覚めるとバラバラにされている仲間たち。残っているのは語り部の結と霧切さんのふたりだけ、という不可能状況。謎自体はシンプルで直球な吹雪の山荘ものながら、犯人の用いたトリックがなんとなく原作の黒幕を思わせるものであったり、終わってみれば作中にて話題に上る作家の名前が読者に対してメタ的なヒントとして機能していることに気付かされたり、細かいところで小業が利いているのも感心です。特に後者に関しては、意外性と先入観が相俟って、知識があればあるほどやられた度が高いかと。
強く見えてもまだまだ弱い霧切さんと、探偵能力を疑問符だけどお姉さんとして彼女を引っ張っていく結のコンビも魅力的です。
日本全国の探偵はすべて探偵図書館(DSC)に登録され、その得意案件ごとに分類されており、難易度の高い依頼をこなすほどにDSCナンバーが0に近付いていくという、清涼院流水の「JDC」シリーズを髣髴とさせる設定にもにやりとさせられました。
一時期、佐藤友哉や西尾維新などのメフィスト賞作家と共に“ファウスト系”と括られていた北山猛邦が、再びライトノベルに近しい分野で元文三にしてファウスト編集長の太田さんが代表を務める星海社から、メフィストの潮流を感じさせるミステリを上梓した。巻末予告によると北山猛邦のファウスト連載作のさらなる書籍化も予定されているそうで、昨今の星海社FICTIONSのミステリに寄った姿勢といい、ここからもう一度、新たなムーブメントが生まれるのではないか――と期待させる、ジャンル全体のターニングポイント的な一作になるような予感さえするのですが、考えすぎでしょうか?
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