2013.11/12 [Tue]
石崎幸二『第四の男』
![]() | 第四の男 (講談社ノベルス) 石崎 幸二 講談社 2011-11-08 売り上げランキング : 171041 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
★★★☆☆
げっ、まただよ、またきたよ、櫻藍女子学院。
その生まれたときからレベル99とか、もう、やめようぜ
お嬢様学校・櫻藍女子学院の生徒が、見知らぬ車に乗せられ拉致される! が、彼女は途中で隙を見て逃げ出し無事保護された。その生徒の名は星山玲奈、大手食品メーカー会長の孫で、実母は十数年前に殺害されていた……。後日、警視総監宛に玲奈を攫ったという犯人グループより「別の女子高生を誘拐した…」との脅迫状が届く! 絡み合う3つの事件!その真相とは。
「ミリア&ユリ」シリーズ 第8作。
『復讐者の棺』でのノベルス復帰以降、基本的に石崎さんにミリユリ、仁美を加えた四人漫才で進行していたシリーズに、ミス研の後輩キャラが久々に登場。ミリユリ曰く、ミステリィ研部員の多くは男の人と話すのに馴れていないため、石崎さんがやってくる日には敢えて部室を訪れないようにしているらしい。すっかり忘れられているふうですけど、まみちゃんの存在はどうなったんだ……。
そんなこんなで序盤はミス研の玲奈ちゃんが巻き込まれた連続誘拐事件の顛末を、後半は打って変わって星山家の別荘(勿論、孤島)でかつて起こった陰惨な事件の謎解きへとシフトします。
誘拐された生徒の名前は明かさず身代金だけを要求する手口や、犯行声明に用いられた手紙の切手の不可解さから推論を重ね、DNAを絡めて納得の答えを導き出すロジカルさはさすがのクオリティ。そこまでやっておきながら、肝心の真相がなんともいえずしょぼしょぼなのも、初期作品を思い出させるテイストです。
実際、本作では過去の事件をひとつひとつ振り返る描写も多く、現在進行形の事件で死人が出ないつくりなども含め、原点回帰の総集編的な色合いが強いです。
とはいえ、ここ数作は本格ミステリにおける伝統的ガジェットの絡んだ殺人と科学捜査のミックスという路線での密度の高い事件が続いていただけに、作品として些か食い足りないのも事実。最初期の頃の作風を懐かしむと同時に、やはり日常の謎風味から現在の路線に移行して正解だったな、と実感させられる一作でした。
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