2013.11/05 [Tue]
森川智喜『踊る人形 名探偵三途川理とゴーレムのEは真実のE』
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★★★☆☆
読者の皆さん! 皆さんは不死身の人間というものを知っていますか。
自分こそが不死身の人間だという人は手を挙げて下さい。
おやおや、どうやら読者の中に不死身人間はいないようですね。
探偵小説が大好きな小学生・古沢くんと同級生のふみこちゃん。二人は公園で出会った謎の博士・エリカが泥と呪文でつくりだした怪人・ゴーレムに出遭う。孤独を嘆き、自分の仲間を増やせと博士を脅迫するゴーレム。そこに悪名高き名探偵・三途川理が関わってきて――。人形男ことゴーレムに、小学生探偵たちは勝てるのか!?
「名探偵・三途川理」第3作。
世界の童話をモチーフに毎度、ファンタジックなコンゲームが展開されるミステリシリーズの最新刊。
デビュー作『キャットフード』の化け猫、前作『スノーホワイト』の白雪姫と魔法の鏡に続く第3作は、土から作られた生ける人形・ゴーレムが題材です。南博士の長年の研究によって生み出されたゴーレムと、三途川理の事務所に出入りする少年探偵隊との騙し、騙され、出し抜かれな欺き合いが描かれます。
あの三途川理がよりにもよって「先生」と呼ばれ、少年探偵団よろしく小学生たちを囲っているというストーリーからして嫌な予感がぷんぷんなわけですけれど、今回も期待を裏切らない下衆っぷりがいっそ清々しいです。目的のためには自分を慕ってくる小学生まで容赦なくダシにする外道さ、半端ねぇ。
本作は少年探偵隊の古沢君が実質上の主役ということで、文体も始終丁寧語。「ああ、なんということでしょう!」や「これは後で重要になってくるので、よく憶えておいてくださいね」といった読者を意識した語り掛け、街を賑わす謎の怪人と先生を慕う少年たち等の設定からもわかるように、江戸川乱歩の「少年探偵」シリーズへのオマージュを徹底した作品となっています。
小学生時代に図書室でポプラ社の『怪人二十面相』や『宇宙怪人』のような小林君が活躍する物語を読み漁った向きには懐かしさ溢れるテイストであるばかりか、矢継ぎ早に繰り返される伏線のばら撒きと回収、端々に見せるロジックのキレは肥えた読者も楽めるレベルにあり、児童文学装いながらも立派に本格していました。
原典で大団円に使われるお決まりの「〇〇先生、ばんざーい」を、アンチ的な台詞に用いているのも小ネタとして面白いです。
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