2009.10/04 [Sun]
輪渡颯介『掘割で笑う女 浪人左門あやかし指南』
![]() | 掘割で笑う女 浪人左門あやかし指南 (講談社ノベルス) 輪渡 颯介 講談社 2008-01-11 売り上げランキング : 776332 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
★★★☆☆
世の中の珍談奇談、特に怪談を集めているとだな、
変なものが飛び出してくることがよくあるのだ
城下の掘割で若い女の幽霊を見たという普請方の男が、まもなく病で死んだ。女の姿を見た者は必ず死ぬという噂が囁かれる折、お家騒動が持ち上がり家老が闇討ちされた。怖がりで純情な甚十郎と酒と怪談を愛する浪人・平松左門が、闇に溶け込んだ真実を暴く痛快時代活劇!第38回メフィスト賞受賞作。
「浪人左門あやかし指南」第1作。
時代小説を読むのは初めてかもしれないということを考えると、こういった時代小説をメフィスト賞受賞作として講談社ノベルスというレーベルから出すことには多少なりとも意義があるかと思います。自分のように時代小説のジャンルに関心のない人間にも、メフィスト賞という広告を通すことで手に取らせることができるのですから。
それはともかく、『掘割』です。
もともと時代小説はミステリと近しいものを持っていると聴いたことがあります。捕り物帖なんかは特にそうで、事件を解決する主人公とその相棒のキャラ立てや関係性が、ミステリにおける所謂ホームズとワトソンに似ているからだそう。事件の怪奇性もミステリ的なシチュを備えているようです。
そんな時代小説だからこそ、ミステリとの相性は抜群で、“七不思議の謎解き”的なノリで怪談話とミステリを融合させているのが本作というわけです。
しかしながら、これでもかというくらいに量を挿入される小話的怪談や数々の怪現象のエピソードは、後々見れば確かにキレイなんだけど、読み進めている間はどうしても散漫に感じてしまいます。ですが、そういった散漫に見えるエピソードを、片や甚十郎の方で、片や左門の方で繰り広げて多角的に話を展開することで、本作のメイントリックが成立しているのですから、まあそこは計算の上でのことなんでしょうね。
実際、辻斬りの犯人が誰かというところまでは勘づいていたのですが、その一歩先が“ああいう”カラクリになっていようとは思いもしませんでした。
表題にもなっている“掘割で笑う女”の正体なんかはちょっと拍子抜けですが、総じてミステリ好きは楽しめる内容&展開になっているかと思います。
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