2013.11/11 [Mon]
石崎幸二『記録の中の殺人』
![]() | 記録の中の殺人 (講談社ノベルス) 石崎 幸二 講談社 2010-11-03 売り上げランキング : 300341 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
★★★★☆
本格ミステリィっていうのはな、人が人として生きるために、必ず到達する場所なんだよ。
人類にとっての約束の地なんだよ
「女子高生連続殺人事件」――201X年9月、5人の女子高生の遺体が埼玉県山中、産業廃棄物の投棄現場で発見された。被害者の共通点は、生年月日が全員同じだということ。それから4ヵ月後、またも女子高生の遺体が東京と埼玉の県境にある産廃の現場で見つかる。被害者は同じく5人。全裸の上、手足を切断されていた……。凶悪な犯行に世間は大パニック! 犯人の次なる狙いは。
「ミリア&ユリ」シリーズ 第7作。
自他共に認めるダメサラリーマンの石崎幸二が女子高生のミリア、ユリ、仁美、氷のような美人刑事・斉藤瞳に詰られ倒すミステリシリーズの7作目です。毎度毎度飽きもせず、今巻も100ページ近くになってからようやく孤島に渡る強行軍。その上、またもDNAが絡んでくる強引さにはもはや執念すら感じさせます。
7冊目にしてユリの家族構成やバックグラウンドが明かされるのもファンには嬉しいポイントです。
本作において焦点となる事件は大きくふたつ。ひとつは大人数の女子高生がバラバラ死体となって同時に発見されるミキサー事件、もうひとつはミキサーから逃れるために疎開した仁美の友人がいる島で起こる連続殺人です。両者共になぜ犯人は殺人を犯したのか、被害者に共通するものは何なのかといった動機論が大きくクローズアップされてきます。ホワイダニットとミッシングリンクについては真正面から挑んでいるだけあって、どちらの事件に関しても及第点以上の解答が用意され、その衝撃度はかなりのものでしょう。
最新科学を伝統的な本格ミステリの中に取り込みつつ、DNAそのものよりDNA捜査の制度の側に着目したアプローチは、同じDNAものでありながらも微妙にアプローチをズラしており、既刊との差別化が上手く図れていました。特に、狂人の論理ともいえる犯行の動機には怖気の走るような薄ら寒ささえ感じさせます。
作者は過去にも著作内で「人間が描けてない」批判に対する反論をギャグを交えてかましていましたが、個人的には石崎作品の犯人の心情吐露、被害者救済としての落としどころは胸にくるものがあって好きですね。
それだけにミキサー事件と孤島の事件との関連性が弱く、無理くり一本に纏めたかのような印象が残るのは勿体ない。一応、展開上繋がりがあるとはいえ、せっかくそれぞれ長編一本ぶんを充分に戦えるレベルのネタなのだから、強引にくっつけなくとも、別々のお話として2本に分けて刊行した方がすっきりとしたように思います。
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