2013.10/23 [Wed]
相棒 Season 12 第2話「殺人の定理」
★★★★★
会社員・大倉の遺体が自宅アパートで発見された。遺体のそばの壁には、血で「a drink」の文字を丸で囲うメッセージのようなものが。被害者が遺したダイイング・メッセージなのか? 右京は、さっそく享と捜査を開始。現場の大倉の部屋へ来てみると、数学関係の本がズラリ。どうやら大倉は数学を趣味にしていたようだ。だととすると、ダイイング・メッセージも数学に関係したものなのだろうか? また大倉は数学の7つの未解決問題の一つで100年間も解けなかったファーガスの定理を研究していたことがわかるが、そのファーガスの定理は、最近になって数学者の肥後教授が証明に成功したと話題になったばかりだった。
Season 12になって初めての通常回は、最近流行りの数学ミステリ。『ハードナッツ』、『浜村渚の計算ノート』、『眼球堂の殺人』と近頃は数学を題材にしたミステリ作品がやけに多いです。
論理パズルなどの例を挙げるまでもなく、もともと物事を理論立てて考える数学と突き詰めてみると証明問題であるミステリとの相性はかなり良く、ある法則性に従って謎を捉えることでするすると真相が紐解かれていく様は、極めてシンプルで美しいです。
今回のお話も、「a drink」というダイイングメッセージから犯人を導き出す明快さは、暗号ミステリとして見ても充分に通じるレベル。捜査の過程で背理法を用いて推理を検証してみせるなど、謎解きのやり方ひとつとっても普段と異なる視点が導入されているのも面白いです。
また、意図してやったかどうかは不明なものの、ダイイングメッセージものにおいて常に付きまとう「被害者はなぜ最後の最後まで助かろうとせずに、ダイイングメッセージなんて面倒な手段を採ったのか」という究極的な問題に対してもきちんと納得できる回答が与えられている点は地味に評価が高いですね。
音楽の使い方からラストワンシーンの落とし方で最近では珍しく初期のテイストを感じさせる一方、透明なボード越しに数式を書くクールでスタイリッシュな演出も押さえ、尚且つ事件に関わったふたりの“天才”の考え方の違いから生まれる衝突、しかし互いにリスペクトは抱いているという複雑な関係も余すことなく描かれ、何よりも数学に対する愛情が伝わってくる物語。
素数の秘密がセカイを滅ぼす云々の突飛な発想も、これまで幾度となく一刑事ドラマの枠を超越した事件を描いてきた『相棒』の世界観だからこそ、ムリなく溶け込み、真実味すら感じさせる。
脚本の金井寛さんはこれまで、「棋風」「同窓会」とよく出来ている言い難い回を担当してきていましたが、これは化けたかもしれません。
肥後さんと助手の女性のセリフ回しがやけにたどたどしかったことを除けば、殆ど完璧に近いクオリティでした。
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