2013.10/12 [Sat]
真梨幸子『鸚鵡楼の惨劇』
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★★☆☆☆
1962年、西新宿・十ニ社の花街にある洋館「鸚鵡楼」で殺人事件が発生する。表向きは"料亭"となっているこの店では、いかがわしい商売が行われていた。時は流れ、バブル期の1991年。鸚鵡楼の跡地に建った超高級マンション「ベルヴェデーレ・パロット」で、人気エッセイストの蜂塚沙保里は誰もが羨むセレブライフを送っていた。しかし、彼女はある恐怖にとらわれている。――私の息子は犯罪者になるに違いない。2013年まで半世紀にわたり、西新宿で繰り返し起きる忌まわしき事件。パズルのピースがはまるように、絡まり合うすべての謎が解けた瞬間、経験したことのない驚愕と恐怖に襲われる。
イヤミス作家としてブレイク中のメフィスト賞作家・真梨幸子による最新作です。タイトルこそ館ものの雰囲気を漂わせているものの、実際にそれらしい洋館が登場するのは第一章のみで、西新宿に建つ鸚鵡楼とその跡地で時を経て繰り返される悲劇の数々を、50年の長いスパンから眺めたミステリとなっています。
男と女の嫉妬と愛憎、ホラーのようにわが身を蝕む疑心暗鬼、ママ友や仕事仲間とのドロドロとした関係性にエロとグロを交ぜ込んで、最終的に鬱々とした救いのない結末で〆める容赦のなさはイヤミス作家の面目躍如。まあ、自分の好みを申せば、あまり好きなタイプの作風ではないのですが。
作中にはサド侯爵の話題に触れられるシーンもあり、リンクとは言わないまでも『パリ黙示録 1768 娼婦ジャンヌ・テスタル殺人事件』(文庫版タイトル『パリ警察1768』)の出来事を思い、悠久の流れに感じ入ることができます。
『鸚鵡楼の惨劇』というタイトルにも関わらず、基本的には惨劇それ自体よりも、物語としてはいかにしてそれに至ったかという“過程”の部分に重きが置かれており、何度か行われる舞台転換の中で、事件そのものは直接的には描かれません。
そのため、最終章になっていざ謎解きが行われたところで、結局のところ秘匿していた情報を後から詳らかにしたに過ぎず、読者に対して公正な驚きを与えられているとは述べ難い。いわゆるどんでん返し的な趣向にしても、その使い方が作者の匙加減一つでどうとでも書ける代物なので、上に同じ。あまり高い評価はできないです。
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