2013.09/19 [Thu]
西尾維新『化物語 [入門編]』
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★★★☆☆
嘘の達人として阿良々木くんに伝授できることがあるとすれば
――人を欺くということと、騙すということは、似て非なるものであるということね。
決して一緒くたにしてはいけないし、並べて語るべきでもない
僕はある朝、階段から落ちてきた一人の少女を受け止めた。避けるよりは正しい判断だっただろう。いや、間違っていたのかもしれない。何故なら、咄嗟に受け止めた彼女、戦場ヶ原ひたぎの身体は、まるでここに存在していないかのように、とても、とてつもなく、軽かったからだ―。すべての“物語”はここから始まった。西尾維新が放つ青春怪異小説「“物語”シリーズ」、特別編集版で堂々刊行!!
「化物語」特別編。
講談社のサイトの刊行予定に名前が載っていて「何ぞこれ?」と思っていたのですが、第1作『化物語』から「ひたぎクラブ」を、最新作『暦物語』からその後日談である「こよみフラワー」を再録し、新たに書き下ろしの「ひたぎコイン」を加えたいわゆるコンビニ本です。最初はよく知らずに書店店頭を探し回るも見つからず、ちょっと調べてみたところセブンイレブン、ローソン限定発売だったんですね。幸いにして私は2軒目にして早々確保できたのですが、ネット上では随分と価格が高騰しているようです。
自分の作品を立場によって読める人間と読めない人間がいるのは不公平なので、限定商法はやらないと西尾維新が明言していたのもいまは昔。KOBOカフェにて100部限定で配布された「ヨウ素の皮肉」に始まり、5000円のお饅頭のおまけの『刀語余話』、『化物語 PremiumアイテムBOX』、果ては読売新聞の全面広告小説と、全作網羅がもはや不可能な状況に陥っています。
そりゃあ、ファンとしてはひとつでも多くの作品を読めるのは嬉しいことではあるけれど、それはあくまでも「読める」という前提があってものです。ここ最近の限定濫発の姿勢には、ちょっと辟易しています。読売新聞とかとってないし! 図書館でコピってきたのに、家に帰って見てみたら切れちゃってるし!(八つ当たり)
本の装丁は意外としっかりしていて、銀箱を取り去った講談社BOXそのものという感じ。コンビニ本特有の安っぽさはありません。
ただし頂けないのは、何を思ったか全篇を通して横書き仕様になっている点です。そもそも、西尾作品の魅力のひとつは様式の美しさを意識した文字配列、文章レイアウトであり、見開き二段組みが最も映える形なのです。
読者層を考慮して二段組みを避けたとしても、ケータイ小説紛い、ネット小説紛いの横書きはどう考えたってないでしょう。読み辛いったらありゃしない。
短々編「ひたぎコイン」は『偽物語』以降にありがちだったおふざけ至上主義な作風ではなく、シリアスな中にときたま会話で笑わせるシリーズ初期に近いテイストです。コンゲーム的な意表の突き方と恋愛小説としてのオチ、ひたぎの孤独と救いがしっかりと落とし込まれ、ショートショートながらに読ませる作品となっています。
そして『終物語』が長くなりすぎにつき、上下巻分冊刊行とな。出たよ、『暦物語』に続くシリーズ延命措置。このシリーズは本当に、こんなのばっかりだな……。
とりあえずは新作発売までに、積んであるファイナルシーズンの2冊を片付けますか。
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