2013.08/29 [Thu]
秋吉理香子『暗黒女子』
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★★★☆☆
視覚を奪われたなかで、嗅覚、味覚、聴覚、触覚はどう反応するのか。
五感を磨き、裏切り、そして解き放つ。それこそがこの闇鍋会の趣旨だと、わたしは理解しているの。
聖母女子高等学院で、一番美しく一番カリスマ性のある女生徒が死んだ。今晩学校に集められたのは、彼女を殺したと噂される、同じ文学サークルの「容疑者」たち。彼女たちは一人ずつ、自分が推理した彼女の死の真相を発表することに。会は「告発」の場となり、うら若き容疑者たちの「信じられない姿」が明かされていき――。
全校生徒の憧れの的である少女の死をきっかけに、彼女の所属していた文学サークルの面々が各々事件にまつわる自作小説を持ち寄って、定例の闇鍋会を行いながら読み上げていく独白形式の長編ミステリ。
どこか浮世離れした豪奢で煌びやかな世界の中で、純真無垢に見える少女たちの中に潜む狂気と残酷さを浮かび上がらせるという設定は、米澤穂信『儚い羊たちの祝宴』に共通するものがあり、意識してか知らずにか、最終的な結末も含めてかなり似通ったものがあります。
そうはいっても、本作はあくまでも長編形式。それぞれの章にミステリとしてのオチはつかず、執筆者によって微妙に証言が食い違い、ダイイングメッセージの多重解釈、指名される犯人もバラバラで次の章へと繋げていくのが大きな違いといえるでしょう。
シチュエーションと道具立てから、最後の最後の落としどころまでの道筋が序盤の段階で見えてしまうため、ミステリ的にはあまり驚かず。もう一転、二転させて、読者を裏切る展開を用意してあげても良かったように思います。
女子同士の陰湿さ、一見仲良しなふうでもその腹の内では相手を憎々しく感じていたりといったテーマはもはや王道ですが、ひとつひとつの物語は自分といつみとの出逢いからかけがえのない日々を綴った青春ものでありながら、最終的にはそれらの文章の奥底に潜むドロドロとした感情を垣間見せる――。章毎に語り手の替わる作中作というギミックを用いて、女子の持つ本音と建前の同居の構図をまるまるそのまま、小説の体裁に落とし込んだテクニックは極めて秀逸でした。
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