2013.08/28 [Wed]
岡篠名桜『浪花ふらふら謎草紙』
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★★★☆☆
……いつやったか、お登美が言うてたなあ。
ふらふらしてばっかりのあんたのこと、糸切れ凧みたいやて。
あんた、自分のこと、迷い鳥みたいに思うてるんやろ。それは違うで。
今ではあんたもわたしらと同じ、木ぃのほうや
商人の町として賑わう大坂の旅篭「さと屋」の看板娘・花歩は十七歳。実は幼い頃、さと屋に置き去りにされた娘だ。父親らしき男が残した数枚の風景画に描かれた景色を探して町のあちこちを歩くうち、すっかり町に詳しくなり、町の人たちにも何かと親切にしてもらえるようになった。それを生かして、花歩は大坂の名所案内を始めることにするのだが……。
「浪花ふらふら謎草紙」第1作。
江戸時代の大坂の町を舞台にしたミステリ風時代小説。築山桂にハマって以来、浪花の町人文化や女の子主人公の時代小説に興味を持つようになり、そんな趣味趣向にまさしくどんぴしゃなシリーズが集英社文庫から刊行されていたので、読んでみました。
収録されているのは全4篇。幼い頃より、自分を宿屋に置き去りにしていった父親の唯一の手がかりである絵のモデルとなった場所を探し歩くのを日課とし、「ふらふら花歩」として町の人々に愛される少女、花歩が巻き込まれるちょっとした事件の顛末を描く日常の謎系連作短編です。
元みなしごでいまは旅籠の看板娘である花歩、商売上手で美人な佐名ちゃん、花歩の幼馴染みで侍の叔父方へと養子に行った千代太郎等、キャラクターで読ませるのはさすが少女小説家。彼女たちの関わるときに頑固で、ときに優しく、ときに切ない物語は大変、魅力的です。
タイトルにもなっている「謎」の部分については、後々カギを握るであろう要素に比較的早い段階で見当がついてしまい、それ以上の裏切りやどんでん返しが用意されていないため、ミステリと呼ぶには些か軽め。とはいえ、完全にフェアプレイであるとは言い切れないながら、第二章「恋絵馬」における暗号の示すものには少なからず驚かされました。
情報の出し方、隠し方に配慮すれば、充分に本格ミステリとして通用する素養は兼ね備えていると思います。
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