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300冊の積読本もなんのその、本や映画の感想などをつらつらと述べてみたり。

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近本洋一『愛の徴 -天国の方角-』

愛の徴 -天国の方角 (講談社ノベルス)愛の徴 -天国の方角 (講談社ノベルス)
近本 洋一

講談社 2013-08-07
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★★★★☆
17世紀のフランス。最愛の人をうしない、希望を求める旅に出たみなし子のアナは、草原で黄金の蛇の指環を拾う。一方2031年の沖縄。量子コンピュータを用いた先端科学実験に参加した語学技官の鈴は、心に大きな傷口を開けた男と出会う――。ふたつの時代に生きるふたりの女性の心の旅が、それぞれに辿り着いた先。その眼前に拡がる奇蹟とは――!?


第48回メフィスト賞受賞作。
 周木律『眼球堂の殺人』に続く(というか同時の)メフィスト賞受賞作は、17世紀のヨーロッパと21世紀の沖縄というふたつの時代、ふたつの場所を量子力学で繋いだ壮大な愛の物語です。
 もともとは単行本で発売されたものですが、たった2ヶ月でノベルス落ち。599ページに書き下ろし短編を加えた大ボリュームにて刊行されました。メフィスト賞作品はやはりノベルスで読みたい(&揃えたい)ので、何せよ嬉しい処置です。

 みなしごの境遇から、孤独だった日々に支えてくれた愛するギュスターブの生まれ変わりである狼を従えた《狼の魔女》と呼ばれるアナ、量子演算センターにおける実験の手伝いを行う日本人の太良橋鈴。片や戦争を避けるためにアナたち一行が奔走する中世ファンタジーであり、片やこれでもかと難解な量子論蘊蓄がどっさり詰め込まれた近未来SF――明確な接点もなく、視点を変えて交互に展開される物語は、やがてその仕掛けが明かされると共に交錯し、そこに込められた愛の深さを読者は知ることになります。
 そうはいっても決して堅苦しくなりすぎず、哲学、衒学、世界史の話題を織り交ぜつつも、適度に砕けた文体であるためにリーダビリティはかなり高いです。

 こう書くといかにもメフィストの本流から外れた作品であるように思えますが、アナと鈴の物語を繋ぐにあたって高田崇史を髣髴とさせる歴史ミステリとしての要素が重要な役割を果たし、読み終えてみると確かにメフィスト賞の枝葉の上に成り立った作品であることがわかります。
 SF的な観点でいえば、データ社会における文献や歴史史料についての問題提起が面白く、それによって生み出される“可能性の過去”という現実でも非現実でもない曖昧な領域が、物語全体にいっそうの美しさと深みを与えているように感じました。


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はろーすみす

Author:はろーすみす
シリーズものも平気で数年寝かせる積読家。本格ミステリとスター・ウォーズ小説を中心に読み漁り、新刊・話題作はあまり追っていません。

好きなミステリ作家は古野まほろ、はやみねかおる、西尾維新、霧舎巧。
ジャンル外では築山桂と小川一水。
講談社ノベルスをこよなく愛す特ヲタ。

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1.トリプルプレイ助悪郎(2007年刊)   2.名探偵に薔薇を(1998年刊)             3.化物語(2006年刊)          4.時砂の王(2007年刊)                  5.天帝の愛でたまう孤島(2007年)

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