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周木律『双孔堂の殺人 ~Double Torus~』

双孔堂の殺人 ~Double Torus~ (講談社ノベルス)双孔堂の殺人 ~Double Torus~ (講談社ノベルス)
周木 律

講談社 2013-08-07
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★★☆☆☆
次元が拡張されると、理解が簡単になる。
平面世界では点または線分またはnが六以下の不定形n角形と複雑に定義されていたものが、
立体世界になると単なる直方体となるようにね

Y湖畔に伝説の建築家が建てた、鍵形の館――「双孔堂」。館に放浪の数学者・十和田只人を訪ねた、警察庁キャリアの宮司司は、同時発生した二つの密室殺人事件に遭遇する。事件の犯人として逮捕されたのは……。証明不可能な二つ孔の難問、館の主の正体、そして天才数学者たちの秘められた物語を解く鍵は!?


「十和田只人」シリーズ(仮)第2作。
 町おこしプロジェクトの一環として眼球堂を手掛けた沼四郎が建築に携わった美術館・双孔堂。計画が頓挫し、廃墟となった双孔堂はやがて改修され、ダブル・トーラスと名前を変えて、ある著名な数学者の所有物となる。
 第47回メフィスト賞受賞作『眼球堂の殺人』に続く、シリーズ第2弾です。本作はもともと『ダブル・トーラス』というタイトルで『眼球堂』よりも先にメフィスト賞に投稿されたもので、座談会ではトリックに難アリとさんざん述べられていましたが、度重なるボツを乗り越えて(本人談)「十和田」シリーズに改稿された上で、今日の出版に至ったという経緯があります。

 奇妙な館に集められた天才たち、建物を丸々使った大トリックといった要素は前作同様。今回はさらに初っ端から十和田が逮捕され、それを捜査する宮司の視点で物語が進むといった変化球がつけられています。
 とはいえ、作風としてはさして変わらず、今作も数学ネタを織り交ぜた王道復古の新本格路線です。これがまた大きな問題で、シリーズ2作目にして、作品全体を覆う空気やトリックそのものにまったくもってオリジナリティが見当たらない。どこかで読んだようなストーリーがあって、どこかで見たようなトリックがあって、どこかで聞いたような動機とオチと人物相関。あまりにも焼き直しに過ぎるのです。

 確かに、作中で語られる数学蘊蓄が事件のトリックにオーバーラップさせられるなど、見るべき点もあるのはあります。ですが、それらがミステリ的な驚きの創出に寄与しているかというと、決してそういうわけでなく、あくまでも感心させられる程度で、それ以上のインパクトがありませんでした。
 数学蘊蓄にしても、専門性が高すぎるために一般人――特に文系人間には呑み込みが難しく、新本格にありがちな「登場人物たちが難解な言葉で、意味があるのかないのかよくわからない、それっぽい会話を行っている」事態に陥っている始末。麻耶雄崇が『翼ある闇』の新装版あとがきにて、当時は「どうせアクセサリーなんだから」と思って適当に意味深な会話をでっち上げていたと語っていましたが、まさにそんなものを読まされた気分です。
 蘊蓄の量に対して作中トリックに掛かっている部分が少なすぎるし、肝心なその部分すら謎解きの補助以上の役割を果たしているとは言い難い。到底、メインには成り得ていません。

 シリーズ全体を通した黒幕の影が、事件の裏にちらついてくるところはかろうじてゼロ年代以降のミステリ風ではあるものの、総じて懐古趣味の気が強く、周木律という作家が今後どんなミステリにチャレンジするのだろう?といった未来への期待感がまるで沸いてこないのは問題だと思います。


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はろーすみす

Author:はろーすみす
シリーズものも平気で数年寝かせる積読家。本格ミステリとスター・ウォーズ小説を中心に読み漁り、新刊・話題作はあまり追っていません。

好きなミステリ作家は古野まほろ、はやみねかおる、西尾維新、霧舎巧。
ジャンル外では築山桂と小川一水。
講談社ノベルスをこよなく愛す特ヲタ。

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1.トリプルプレイ助悪郎(2007年刊)   2.名探偵に薔薇を(1998年刊)             3.化物語(2006年刊)          4.時砂の王(2007年刊)                  5.天帝の愛でたまう孤島(2007年)

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