2013.08/10 [Sat]
蓮見恭子『拝啓 17歳の私』
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★★★☆☆
特に和央とゆりってさぁ、表面上は仲良くしてるけど、お互い嫌ってると思うよ
空手部の選抜大会出場を応援する校内のポスターが何者かによって破られた。しかも掲載された主将・結成の写真を狙っての犯行だった。目撃者の証言では、犯人は結成本人だというのだ。その場に居たはずもなく、犯行に全く身に覚えが結成は、目撃証言の特徴からある人物が真犯人だと気がつくが―――。
空手女子たちの日常にまつわる謎の数々を、語り手を交代しながら描く青春ミステリ連作集。思春期の少年少女たちの親との関係や、捨てざるを得なかった大切なもの、疑心暗鬼と恋心といった要素が散りばめられ、群像劇的な側面を持ちつつ傷を抱えた主人公の再起に収束する流れは、ザ・青春小説。この手のジャンルの王道で、男の子にはぴんとこない危ういバランスの上に成り立った女子同士の友情など、瑞々しい中にも確実にビターなテイストが混じるところは、いかにも女性作者らしい視点です。
提示される謎の訴求力や解決へのプロセスは特段ミステリとして優れているわけではないものの、叙述トリックの存在を読者に匂わせた上で、そこからさらに一段上の仕掛けを講じてくる第一章はかなりよくできています。
ところが、全体に目を向けるとそれがむしろ足を引っ張っている感もあり、連作としてのサプライズ演出を優先させたいがあまり、個々の人間関係や全体像の把握が難しく、もっと踏み込んでいえば、ときたま読んでいて現在の語り手が誰なのかさえもイマイチわからないという、小説としてはおよそ本末転倒な事態に陥っているのは宜しくありません。
昨今、何かと「必ず二度よみたくなる!」だの「ラストの衝撃」だのといった言葉が持て囃されているミステリ業界ですが、それらの潮流の悪い部分が見事に出てしまった、反面教師的な一作でした。
しかし、この表紙デザインの安っぽさは、もうちょっとどうにかならなかったんでしょうか……。
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