2009.09/23 [Wed]
西尾維新『ある果実』
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★★★★★
交換しようよ。今日の記念に
電車の中で小説を読んでいた海鳥なことは、隣の女子高生が自分の本を露骨に覗いてくるのに気付く。痺れを切らして問い詰めると、どうやら彼女も同じ本を持っていたようだった。そして、その本は面白くなかったという。「人間はどうして小説を読み、そして書くのですか?」その質問が意図するところは――。
『なこと写本』第2作。
宝島社刊の『西尾維新クロニクル』所収の書き下ろし小説。
本と小説の在り方を問うてみる『なこと写本』シリーズ、今回は“本を読む理由”がテーマ。
『栄光の仕様』と同じく、語り手が落ち着いているので読みやすいことこの上ないです。
電車の中で本を読むのは一種の宣伝行為だとか、たくさんの本を読んでいくうちにつまらないと感じる本に多くぶち当たるようになってくる、とか。今回も読書に関する面白い考え方が披露(?)されていて興味深い限りです。西尾維新の代表作は?と訊かれたら『戯言シリーズ』も良いですが、迷わず『なこと写本』を挙げたい今日この頃。
とはいえ、るい江さんの見解には若干の反論なんかもあったりして、いくらたくさんの本を読んだところで、つまらないと感じる本の数が増えてくるかというと、自分の場合はそうでもなかったりします。というか、多分大方の人は自分と同意見かと。確かに読書の技術(?)が熟練されてくると、今まで気にも留めなかったような文章力の低さやら粗やらに敏感に反応してしまうこともあります。それはある程度の読書量をこなしてきた中級者以上の人に見られる症状といえなくもないですが、それでもやっぱり良いものは良いと感じますし、どんな作品にぶち当たり、どんな作品を引き当てるかという運も結構絡んでくると思います。
なんだかんだいっても、結局は作品に対する感想なんて人によって違うし、どんなに周囲の評価が低かろうが、実際に中身を読んでみなくてはわからない。もしかしたら、それが『させられ現象』でいうところの“人生を変える一冊”になるかもしれない。だけど――だからこそ、われわれは本を読むわけで。そこらへんはなことくんやるい江さんと、同じ考えだったりします。
――しかし、“今日の記念に”同じ本を互いに交換し合うって、、、本に並々ならぬ愛着を感じている本読みのひとりとしては、かなり憧れるシチュエーションというか。やばい。西尾維新は俺を骨抜きにするつもりかっ!!
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