2013.07/16 [Tue]
法月綸太郎『犯罪ホロスコープⅡ 三人の女神の問題』
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★★★★☆
十年前に解散した女性三人組アイドル・トライスター。彼女たちが所属していた事務所の元社長・折野が他殺死体で見つかった。犯人と目されたのは、元ファンクラブ会長の安田。安田は自身のブログに折野殺害をほのめかす声明文をアップした直後、服毒自殺していた。しかし捜査を進めるうち、安田の共犯者がトライスターのメンバー内にいたことがわかる。モッチ、メグ、アズミン、三人の女神のうち、いったい誰が犯人なのか――。名探偵・法月綸太郎が六つの難事件に挑む。
「法月綸太郎」シリーズ 第13作。
2008年刊行の『犯罪ホロスコープⅠ 六人の女王の問題』に続く、黄道十二星座とギリシャ神話を題材にした連作ミステリ集の後編です。
計6本の事件から構成されており、それぞれ交換殺人、操りからのフーダニット、構図の逆転、ダイイングメッセージ、誘拐事件、オカルトもの、と幅広い謎が展開されるのも前作同様。どの短編もこれでもかというほどのテクニカルさが光っているのも特徴で、そのレベルは前作を凌ぎます。ラスト2編は真相の意外性もかなりのもので、単純にロジック一辺倒になっていないところも塩梅としてちょうど良い。
「宿命の交わる城で」は、昨年度本ミス第1位を獲得した『キングを探せ』のパイロット版とのことですが、同じ交換殺人を扱っていながら、まったく異なる切り口から書かれていて、本短編集の中では最も技巧が凝らされた逸品です。
一方、ダイイングメッセージものの「錯乱のシランクス」ではそりゃないだろ、と感じさせるような相当ムリのある状況が敷かれています。
しかしながら、これらの作品には共通する問題があって、どちらもミステリとしての魅力、“まだ見ぬ謎”の創出を追求するあまり、犯行計画そのものやトリック自体が複雑になりすぎて、作中で仕掛けた人物の制御できる範囲を超えてしまい、結果的に有用性の面で破綻を来しているのです。警察の目を欺くための罠が探偵の注意を引き、ダイイングメッセージものにおける新たな試みが人間心理の観点から不可解さを生み出す。
本格への拘りと可能性への挑戦が、解かれるべき事件そのものをダメにしてしまうという本末転倒さは、ミステリの在り方を考える上で非常に興味深くもあり、いかにしてそのふたつに折り合いを付けて両立させるかが、今後解決していくべき命題でもあるように感じました。
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