2013.06/26 [Wed]
ティモシイ・ザーン『スター・ウォーズ 過去の亡霊(下)』
![]() | スター・ウォーズ 過去の亡霊〈下巻〉 (ソニー・マガジンズ文庫) ティモシイ ザーン Timothy Zahn ソニーマガジンズ 1999-10 売り上げランキング : 673901 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
★★★★☆
あなたは彼が新共和国全体を相手にするつもりでいるような口ぶりだけど、
それも新共和国がひとつにまとまれば、の話よ。カーマスの一件でわたしたちは真っ二つに別れているわ。
それに帝国がこれほど弱くては、ほとんどの人々が脅威とはみなさない。
わたしたちは帝国軍を口実に使うこともできないのよ
発掘された一枚のデータファイルが、内紛に揺れる新共和国に新たな波紋を投じた。皇帝による大虐殺事件にボサンが関与した事実が記されていたのだ。ルークは瞑想で不吉な未来を予見する。不穏な空気は、暴動へと発展し、レイアとハン・ソロがその渦中に巻きこまれ、混迷の新共和国に追い討ちをかけるように、スローン復活の報が入る。錯綜する情報、肚の探りあい、暴走する正義……見えない糸に操られる銀河に平和が訪れる日は来るのか。
「ハンド・オブ・スローン」二部作 第1作、下巻。
いよいよ本格的に動き出す打倒、新共和国への秘策。偽スローンを擁立した虚仮脅しのハッタリ作戦、と概要だけ述べると何ともチープですぐにもボロの出そうな計画ですが、スローンに扮する詐欺師・フリンの天才的応用力と元ロイヤルガード・ティアスの類稀なる明晰さによって共和国側に与える情報を完璧なまでに制御し、操作することで内部不和を招き、疑心暗鬼に陥らせて元老院を立ち行かなくさせる手腕は見事のひと言です。
ただ単にスローン生存を仄めかすだけではなく、証言者の経歴や共和国内での評判、立場までも考慮して仕掛けてみせる様は、彼らならば本当に新共和国を倒してしまうのではないか、とさえ思わせるほどです。それに対してモフ・ディズラの小物っぷりは酷いですね。権力主義に凝り固まって、滑稽ですらあります。
一方の新共和国はというと、これがもう本当にダメダメすぎる。カーマスをダシにして己が惑星の利益を得んとする輩の諍いがエスカレートするばかり。旧共和国末期も相当腐敗していたそうですが、作品だけ見てみれば設立たった15年弱にして、新共和国政府はそれ以上に酷い状況に身を置いているように思います。挙句の果てには、帝国時代はパルパティーンが独裁によって惑星間の紛争を抑えていたが、現在はそれもなくなり歯止めの効かなくなっている状態であるとさえ言われる始末。
リアリティがあるといえばこれ以上なくそのとおりなのですけれど、長年のレジスタンス活動の末に勝ち取った自由がこの有様かと思うと、皮肉というよりも情けなさの方が先行します。
そんな中で、誰よりも真相に肉薄しているのが、帝国領内を単身説得に回り、新共和国との和平交渉を実現させようと奔走しているペレオン提督。ディズラによる妨害工作、巧妙な罠も何のその、経験と実践により培われた審美眼によって冷静に現在の状況を捉え、判断を下す姿が恰好良すぎます。これは、ペレオン好きとしては垂涎モノの一作ですね。
物語はさらに、『未来への展望』へと続く。
スポンサーサイト
Comment
Comment_form