2013.06/19 [Wed]
映画『ヴィレッジ』
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★★★☆☆
1897年、ペンシルヴァニア州。深い森に囲まれた人口60人ほどのこの小さな村で、人々は自給自足の生活を営んでいる。だがこの共同体を守るために、村人は不可解な掟を義務付けられていた。しかし鍛冶職人のルシアス・ハントは、閉鎖的な村の生活に飽き足らず、外の世界への好奇心を日々募らせていた。彼の恋人は、村の指導者エドワード・ウォーカーの娘、アイヴィー。彼女はほとんど盲目だったが、おぼろげなイメージを感じることはできた。幼なじみのノア・パーシーは、精神のバランスを欠いており、いつも村と禁断の森の境界をうろついていた。彼はアイヴィーを愛しており、ルシアスに憎悪を募らせていた。そしてアイヴィーの姉、キティの結婚式の前日、ノアの手に、不吉な色とされる赤い花が握られていたことをきっかけに、突然村の平穏な日々は終わりを告げる。 (2004年 アメリカ)
地上波で放送があったものを録画視聴。といっても、かなり前のものですが。
平和で穏やかな村にまつわる秘密を巡るホラー映画、ということで良いのかな? まるでお伽噺の世界のようにメルヘンで、誰もが平和に暮らしている村に陰を落とす禁忌の存在。なぜ彼らは村の外に出ることが許されないのか、夜になると現れる赤い怪物の正体とは――。
“箱庭”は私の最も好きなテーマのひとつで、いま自分たちが見ている世界は本物ではない、誰かが人工的に整えた環境かもしれない。けれど、殆どの人間は自分たちの“世界”に疑問を抱くこともなく日々を過ごしているし、“世界の真実”を知ることなく一生を終えてゆく。そんな中で、主人公はとある事件をきっかけに外の世界の存在を知り得ることになる。
舞台の村が箱庭である時点で、観客にとっては、何の目的で箱庭に保たれているのか、外の世界に何が待っているのか、が最大の関心事となってきます。叙述トリック的には、ここでどれだけのサプライズをぶちかませるかが勝負です。
一方でそれは同時に、観客に対して予めどんでん返しを仄めかしていることにも他ならず、自らハードルを上げる行為でもあります。そして、本作において「驚愕の結末」が観客の予想の上をいっているかというと、実際はそこまでではありません。
しかしながら、本作の場合、作中のカラクリが明かされることで物語の全体像をはっきりと見渡すことができ、そこに込められた人々の想い、そして儚さと希望をよりいっそう際立たせてみせています。サプライズ偏重型の作品として見た場合はイマイチ振るわない結末ですが、こと物語性に着目して観てみると、どんでん返しをしっかりと全体のストーリーに組み込めており、決して叙述トリック一点突破になっていないことがわかります。
映画にしろミステリにしろ、昨今はとにかく驚かせばOK、叙述トリックを使ってナンボといった風潮でこの手の作品が濫発されていますが、そうした有象無象とは異なり、意味のある使い方をしている点は高く評価したいです。
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