2013.06/16 [Sun]
ティモシイ・ザーン『スター・ウォーズ 過去の亡霊(上)』
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★★★★☆
そろそろ新共和国に使者を送る潮時だと伝えるがいい
降伏の条件を話し合うために
“エンドアの戦い”から15年、今やほぼ壊滅状態にある帝国の残党は、ふたつに割れていた。屈辱に耐え、降伏して反撃の機会をうかがうか、内紛の絶えない新共和国の自滅を待つか。折しも、かつて新共和国に多大な脅威を与えたスローン大提督が復活した。死んだはずのスローンが、今なぜ……? 多くの謎をはらみつつも、帝国軍は覇権奪回に向けてにわかに活気づく。
「ハンド・オブ・スローン」二部作 第1作、上巻。
およそ10年以上ぶり(日本語正しい?)の再読です。当時はまだ「スター・ウォーズ」のスピンオフを読み始めたばかりの頃で、スローンやらボサンやら言われても何のこっちゃ状態で読み進めていましたが、それなりに「SW」知識を身に付けたいま改めて手に取ってみると、これがオールスターキャストでとにかく盛り上がる。
時は『EP6』の15年後、弱体化する帝国の現状を見兼ねた帝国軍最高指揮官のペレオン提督は、モフたちを説得し、遂に新共和国との和平を結ぶ道を決断する。一方で、内部で火種が燻る新共和国では、かつて行われた皇帝によるカーマス虐殺にボサンのグループが一枚噛んでいたいた事実が急浮上。ただでさえ嫌われ者のボサンに対し、人々は紛糾し、怒りも露わに報復を訴えます。その機に乗じて、和平交渉に反対する帝国側の工作員が巧みに民衆を扇動。銀河に暴動の火種をバラ撒くと同時に、スローン復活という“希望”をちらつかせ、新共和国に対し最後の戦いに挑む――。
当事者であるカーマスの意見を置き去りに、世論だけが過熱し、怒りの感情がパンク寸前にまで膨れあがっていく危うさは現実の社会問題、国際問題とさほど変わりなく、それだけに非常にリアルでスリリングです。
また、和平交渉を進めようとする帝国の良識派、妨害工作を企む和平反対派、突如として明るみに出たカーマシ・ドキュメントの対応に苦慮するレイアたち、暴動寸前の銀河市民、謎の言葉「スローンの手」の秘密に迫る密輸業者のタロン・カード、海賊船に乗っていた出自不明のクローンの行方を別口で追うルーク etc……、様々な場所でそれぞれの人が、別々の思惑と行動の下、共和国と帝国との和平条約締結という決着点に向けて奔走する姿を眺めるのは、映画『EP4』以前からさんざん繰り広げられてきた両者の戦いが終焉を迎え、ひとつの時代に区切りをつけるまさにその瞬間に立ち会っているかのようで、言い知れぬ高揚感、臨場感を味わえます。
これぞ、何百年、何千年もの歳月をサーガとして描く「SW」の魅力ですね。できれば、数々のスピンオフ群によって編まれたこの大河としての本流も、新作『EP7』で壊さず踏襲していって貰いたいものです。
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